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2005年8月 8日 (月)

ピーター・ジェニングス

 このブログもホームページも、基本的にバスケットボールの話だけを書く場だと考えているのですが、きょうはバスケットボール以外で書き留めておきたいことがあるので、non-basketballというカテゴリーを作ってみました。

 書き留めておきたいこととは、昨夜亡くなったABCニュースのキャスター、ピーター・ジェニングス氏のこと。アメリカに住んでいない方にとってはあまり馴染みがないかもしれませんが、ABCニュースの顔でもあったベテランキャスターです。肺がんで4月から看板番組のWorld News Tonight with Peter Jenningsを降板(番組としては、一時休みという形をとっていたようですね)、治療にあたっていたそうですが、昨夜、ニューヨークで家族に見守られながら息を引き取ったそうです。

 アメリカには、彼のほかにもテッド・カップル、ダン・ラザー、トム・ブローカー、そして女性でもバーバラ・ウォルターズというすばらしいテレビ・ジャーナリストたちがいますが、その中でもジェニングスは特別でした。少なくとも、私にとっては。

 といっても私はジェニングスをはじめとする米ジャーナリストのことに詳しいわけでもなく、正直言って、NBAのシーズン中は、夕方から夜にかけてNBAの試合かESPNにチャンネルをあわせることがほとんどなので、スポーツ以外のニュースを見ない日のほうが多いんです。だから、実を言うと、恥ずかしながら、ジェニングスが肺がんを理由に番組を降板していたことも、今回の死亡のニュースで初めて知りました。

 そんな私が、ジェニングスをほかのキャスターとは別の目で見るようになったのが、9/11事件後の報道でした。さすがに事件直後は、どのネットワークもエース・キャスターたちがテレビ画面に出てきていました。少しでも多くの情報を知りたいという気持ちから、あちこちのチャンネルをサーフィンしていたのですが、こういうときはどうしても愛国主義的な機運が高まるもので、中でもふだんから若者向けをうたっている某局などは、当初のショックが収まると「アメリカ最強、こんなことをしたやつらをやっつけろ」といった好戦的な空気を前面に出してきて、見ていられない気分になったものでした。もちろん、上にあげたベテランのキャスターたちが仕切っている番組はそんなひどいことはなく、安心して見てはいられたのですが、でも、やはりアメリカからの視点ばかりであることが気になっていました。アメリカ人が、アメリカ人に向けて放送しているのだから当然なことなのですけれど。

 でも、そんな中でジェニングスだけは、少し違ったのです。もちろん、犠牲になった人たちに対する哀悼の意は根っこにもちながら、それでも、どうしてこういうことが起こってしまったのか、ほかの番組にはない多極的な視点で報道していました。中でもすばらしかったのが、いろいろな人種のアメリカ在住の子供たちを集めて、9/11について話し合った番組。子供たちだけでもこれだけ多岐に渡る視点が出てくるのかと思わせてくれる、すばらしい番組でした。当たり前のことと思うかもしれませんが、それだけ当時のアメリカのメディアで出てくる視点は偏っているものが多く、余計に新鮮だったのです。

 そういった、多岐にわたる子供たちの声をうまく引き出していたが、司会をしていたピーター・ジェニングス。床に座って子供たちと同じ視線の高さになり、あるいは輪になって座る子供たちの間を歩き回りながら、子供たちに、どういう気持ちでいるのか、なぜそう思うのかといったことを問いかけていました。それも、あらかじめ決められた筋書きの方向に子供たちの意見をまとめようとするのではなく、子供たちの言うことに真剣に耳を傾け、ともに学ぼうという姿勢が表に出てきていて、すばらしい番組でした。あのときは、アメリカ中、子供たちだけでなく、大人も混乱していた時期で、それなのに物知り顔に語る大人も多かったので、ジェニングスのそういった姿勢はとても新鮮に映ったのです。

 その番組を見た後、インターネットで調べて、ジェニングスがカナダ人だということを知り、それで彼はアメリカ人キャスターたちとは違う視点を持っているのかと納得したものです。ABAのサイトの掲示板では、ジェニングスがカナダ人だからアメリカのニュースを伝えるのにはふさわしくないと批判する声もありましたが。でも、そういった一部の批判は別にして、ジェニングスのような他国(たとえ、それが同じ言葉を使う、ほかよりも近い隣の国であっても)の人物がニュース番組の顔となっているということに、今度はアメリカの懐の深さも感じたものです(ちなみに、ジェニングスはその2年後、2003年にアメリカの市民権を獲得したそうです)。

 私の仕事は、ジェニングスがやってきたこととはまったく分野も違いますし、本当に比較にならないほどちっぽけなことにすぎませんが、どんな仕事をするにしても、ああいった広い視点で考えられる人間でいたいと思います。

 きょうは夕方から、ずっと、ABCやCNNでジェニングス追悼の番組を見ていました。肺がんで"World News Tonight with Peter Jennings"を降板するときの、最後のジェニングスの挨拶も今さらながら見ましたが、病気の影響でかすれ始めた声で、それでも表情は崩れることなく、ジャーナリストの表情でした。

 もう、彼が仕切る番組を見られないとわかって、今さらながら、もっと見ておくべきだったと後悔しています。

 どうか、安らかに眠られますように。

ABCのサイトには、ジェニングスの特集ページがあります。
http://abcnews.go.com/WNT/Jennings/

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コメント

聞いたことのある名前だなってのが、最初に思ったことでした。そして、前に、英語を勉強してたときに、インタビューを聞いたなと思い出しました。その後、BSで何回かニュースを見たことも。すごく久しぶりに(ごめんなさい)このHPを見たときに、ピーターの名前を見かけて、すごく不思議な気分です。そして、テロについてのアプローチの違いを知って。3月からロンドンの近くにすんでいて、テロの怖さ、その国に与える影響を毎日ニュースで見ているだけに、なんだかすごくいろいろな要素が絡んで、この記事にたどり着いた気がして、仕方がありません。おおげさな、と思われるかも知れませんが、たばこを止める理由を探していた自分にとっても、すごく影響する気がして、偶然なのか、何なのかって感じです。テロに関しては、今、イギリスではモスリムへの嫌がらせとか、嫌な話題が多いんですが、報道には偏りがあるみたいです。こういった、別な見方が、本当に必要なんじゃないかと考えさせられました。バスケ以外の問題を扱った、今回のトピックは、本当にすばらしかったです。これからも、期待しています。たばこを止めるきっかけをくれて、ありがとうございました。

ちなみに、イギリスではバスケは全く人気がないもんだと思い込んでいたのですが、民放で週一回、ケーブルTVではもっとやってるみたいで、結構見てる人もいるみたいです。15年前に、毎月HOOPを楽しみにしていたころとは、大違いですね。どこにいても、バスケが楽しめそうです。

投稿: 元ジャズファン | 2005年8月13日 (土) 16時18分

こんにちは。
同じ頃に、4大ネットワークの顔のキャスターが交代したのではなかったでしょうか?
CSで時々、ニュースを聞いて耳を慣らそうと見ていたので知ってはいました。

日本でも、ニュース番組のキャスターはある意味カリスマ的なイメージがあるようですが、アメリカでは「彼の顔を見ないと夜が終わらない」と言われるように、とても影響力が強いと聞きました。
最近9.11の無線かなにかのやり取りが報道されたりしましたね。ジェニングス氏が亡くなったことも時を同じくして、日本でも報道されています。

ガンだと言うことは聞いていましたが、てっきり元気になられて、また報道の現場に戻られると思っていましたのに...
ご冥福をお祈りします。

投稿: クニー | 2005年8月14日 (日) 02時39分

今日(8/22)にBS2でピータージェニングスの特集をやっていますよ。

投稿: bj | 2005年8月22日 (月) 03時13分

BS1の間違いでした。すいません。

新聞で見てジェニングスと出ていたので、このサイトで紹介されていた人かな?とおもい番組を見てみました。

このブログの情報以外何も知らなかったので、こんな人がいたんだなという感じでしたが。

ただ、9・11のことを思い出しました。あれからもうすぐ4年たつんですね。

個人的なことを書かせてもらうと、そのときちょうどテレビのない寮にいたので、1年後に映像で見て、凄い事がおきていたんだなという感じだったのですが。

その後、イラク戦争が起こりそうなとき、アメリカについて色々と調べてみて、アメリカが血で血を洗うようなことをしようとしていた時、アメリカの人たちもそれに賛成しているというのを聞いて残念に思った記憶があります。

ただ、その中にもジェニングスさんのような人がいたんだ、ということをこのブログで知りました。少し遅いかもしれませんが、彼について少し調べてみようと思います。

あまりまとまっていない文章ですいませんでした。

投稿: bj | 2005年8月22日 (月) 03時52分

 みなさん、バスケネタでないトピックへのコメント、どうもありがとう。試合で出ていたので、bjさんが書いてくださったBSの番組は見逃してしまいましたが、もしかしたら彼が亡くなった直後にアメリカのABCで放送していた特番なのかな。

 関係ないようで、私の中ではつながりがある話。キリンインターナショナルの取材で行った広島で、平和公園を歩いてきました。「安らかに眠ってください。過ちは二度と繰り返しませんから」という言葉が碑に彫られていますが、9/11のあとに、この言葉を世界中の人たちに理解してほしいなと思ったことを思い出しました。

投稿: 陽子 | 2005年8月25日 (木) 04時09分

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