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2006年5月23日 (火)

Mirror Match

P1120675s_3 P1120678s_4  カンファレンス・セミファイナルのサンアントニオ・スパーズ対ダラス・マベリックスは、第7戦のオーバータイムまでもつれる熱戦で、かなり見ごたえがあった。よく似たチーム同士の対戦でもあり、「鏡を見ているようだ」(確か、スパーズHCのポポビッチが言っていたコメント)という声もあった。何しろ、HCのグレッグ・ポポビッチとエイブリー・ジョンソンが師弟ということもあって、システムも似ている。このシリーズをスカウティングしていた他チームのスカウトいわく、特にディフェンスの基本システムは両チームともそっくりだそうだ。オフェンス面では、マブスはドン・ネルソンがヘッドコーチだった頃のシステムも残しているので、そこまで、そっくり同じというわけではないようだけれど。
 このシリーズ中に何度も、「弟子」のエイブリーについて聞かれたポポビッチは、「いい加減、エイブリーはそう呼ばれることに飽き飽きしているんじゃないか。彼だってこのリーグでもう90年(!)やっているのだから、誰かの弟子でも何でもない。一人で立派にやっているだろ」と、ポポビッチ流のシニカルなコメントをしていた。このシリーズのエイブリーの采配は弟子というよりは挑戦者的なアグレッシブなもので、見ていても、エイブリーの仕掛けにポポビッチがどう対応するかなど、見ごたえがあるシリーズだった。

P1120760s  「鏡の対戦」で思い出したのは92年のNBAファイナル。シカゴ・ブルズとポートランド・トレイルブレイザーズは、どちらもシューティングガード(マイケル・ジョーダンとクライド・ドレクスラー)を中心としたアスレティックなチームで、チーム構成やスタイルがよく似ていた。現地で取材していて、「鏡のよう」という表現を何度か聞いたので、それをHOOPの記事に使ったところ、その記事はタイトルに、"Mirror Match"とつけられ、左ページにジョーダン対ドレクスラーのマッチアップのポジ写真、右ページにその反転写真というデザインで上がってきて印象的だった(バックナンバーを引っ張り出してきて、そのページを撮影したのが左の写真)。
 今回のスパーズとマブスも、同じテキサスのチームだということや、スピードあるガードがいたり、試合中におでこに怒りマークがついているのではないかと思うほど真剣なヘッドコーチなど共通点はいくつもあるけれど、何といってもダンカンとノヴィツキ。器用で多才なビッグマンという点だけでなく、言葉よりもプレーで引っ張るタイプのリーダーという点もそっくりだ。

 さて、今回、このシリーズを取材して一番感じたのはノヴィツキの変化だ。かつてソフトだと批判されていた彼だが、このシリーズでは捻挫してもプレーし続け、第7戦4Qの最後のシュートもジャンプシュートではなく、ゴールに攻め込んでの3ポイントプレーを決めるなど、強さが目立った。エイブリー・ジョンソンが「タフでないとスパーズには勝てない」と言っていたが、まさにマブスにとってはそのタフさで勝ち取った勝利だった。ノヴィツキ個人としても、このシリーズでは、ダンカンと並べて評価されるくらいの選手にまで成長したことを証明した。

 最後に、ノヴィツキのタフさに関連して、ひとつ世間の誤解を解くためにも書いておきたいのは、マイケル・フィンリーへのブーイングの話。
 昨季まで長年マブスとしてプレー、去年夏にNBAの特赦措置でサラリー削減のためにマブスをカットされたフィンリーは、その後スパーズと契約。マブス・ファンにとっても思い入れがある選手だけに、レギュラーシーズンの2試合ではスパーズがダラスで試合をするたびに、ファンも拍手で迎え入れていた。それが、このシリーズでは、フィンリーがボールを持つたびにマブス・ファンからはブーイングの合唱。スパーズHCのポポビッチは「長年忠誠を尽くした彼をブーイングするなんて」と憤慨していたし、今朝のアリゾナの新聞を見たら、やはり元マブスのスティーブ・ナッシュも「ばかげている。信じられない。失礼だ」と怒っていた。
 でも実はこのブーイングは、マブスのファンがフィンリーがスパーズでプレーしているのが不満だから発しているブーイングではなく、ノヴィツキが、シリーズ3戦@ダラスを前に言ったコメントに端を発していた。ダラスのファンがレギュラーシーズン中に暖かくフィンリーを迎えていたことを聞かれたノヴィツキはきっぱりと、「レギュラーシーズン2試合で彼は十分に拍手を受けた。そろそろ彼をブーイングする時だ」と言ったのだった。ノヴィツキいわく、これは冗談半分で言ったコメントだったらしいのだけれど、その一方で「勝負のときは友情は別。フィンリーはいまや敵」という確固たる気持ちの表れだったのだろう。そして、おそらくマブスのファンも、そんなノヴィツキの気概を誇りに思い、敬意をこめてフィンリーにブーイングしていたのだと思う。
 次のカンファレンス・ファイナルでは、またもや元マブスであり、ノヴィツキの大親友でもあるスティーブ・ナッシュがサンズのユニフォームを着てダラスを訪れる。果たしてマブス・ファンにブーイングで迎えられるのか、拍手で迎えられるのか、興味深い。
 

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コメント

ダラスの観客席には「裏切者!」というような手書きの応援バナーを持っている人も見かけたので,多分全員が“敬意”を持っていたわけではないのかなと思います。
サンアントニオを応援している立場から聞くと,なにが発端であれオーナーの発言なども相まって相当不愉快に聞こえました。(片側からの視点なので,ちょっと主観的かもしれませんが…)
せっかく選手・コーチたち共に頑張っていいチームになっているのに,地元観客とオーナーの態度に正直がっかりです。

投稿: sid | 2006年5月25日 (木) 06時47分

そんなバナーがあったんですか? それは知りませんでした。ま、全員が同じ考えというわけでもないでしょうしね。少なくとも私が取材した第3戦と4戦では、そんな険悪ムードのブーイングには感じなかったのですが、もしかしてジェイソン・テリーの一件のあとの第6戦のときでしょうか。

まぁ、ブーイングは切り離しても、ダラスというところは相手チームに対する煽りが少しアグレッシブなチームだなというのは感じました。スパーズ戦でも、タイムアウトのときに、"Stop the flop"という音楽に乗せてジノビリのビデオクリップが流されたり、かなりスパーズをネタにいじってました。私的には笑えるぎりぎりの線だと思っていたのですが、スパーズファンの方には「とんでもない!」だろうなと思います。

投稿: 陽子 | 2006年5月26日 (金) 20時42分

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