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2008年3月の記事

2008年3月28日 (金)

3ポイント王

P1240692s_2  少し前のことになってしまったが、2月下旬、松井啓十郎選手@コロンビア大を見に、NYまで行ってきた。←そのときに取材した話は25日に発売になったばかりの月刊バスケットボール5月号のCrossover USAに記事として書いたので、興味ある方は、ぜひそちらも読んでくださいね。
 Crossoverの記事でも書いたけれど、今シーズンの松井選手は見事、アイビーリーグの3ポイント王になった。私が行った頃はまだ成功率も5割を越えてダントツ1位だったのだが、シュートがあまり入らない試合が何試合かあり、最後は5割を若干切ってしまった(25試合で102本打って50本成功)。それでも、なんとかリーグ1位は死守。最後の試合で、すぐ下にランキングされていた選手がかなりの本数を決めていたので、チェックするこちらもドキドキものだった。

アイビーリーグの個人スタッツランキング
(秋になったら新シーズンのスタッツと入れ替わるかも)

 1位ということはアイビーリーグの歴史に名前を刻んだと言っていいと思う。オメデトウ! 1試合平均2.5本決めればNCAAの全米ランキングでも上位に入ったのだけれど、少し足りず(1試合平均2本)、こちらは残念ながらランク入りならず。

P1180751s_2  さて、ここで少し去年の話。去年も2月に取材に行ったのだが、実はそのときはDNP(不出場)の試合や、出てもわずか数分という試合が続いていたときだった。取材した試合のうち、1試合目もプレータイムは僅か2分。その前のシーズン(1年のとき)は先発だったのに、1年下にコーチ好みのガードの選手が何人か入ってきて、松井選手の出番が減ってしまっていたのだ。
 一年下のガードの選手3人のうち2人がニューヨーク出身で、ニューヨークの選手らしくアグレッシブ。ジョーンズ・コーチもニューヨーク出身だけに、少しくらいコーチに口答えしてでもぶつかってくる、アグレッシブな選手のほうを高く評価するのではないか、と当時の松井は言っていた。松井自身は、規律に厳しい高校で教わってきたこともあり、また日本人でもあるので、コーチに口答えなんてするタイプではない。そういう選手のほうがコーチは好きだとわかっていても、性格は簡単に変えられるものでもない。

 上の学年にいい選手がいてその分出番が少ないのなら、次のシーズンになれば出番が増えるかもしれない。でも下の学年の選手が相手だと、その(コーチのお気に入り?の)選手からプレータイムを勝ち取らないといけないわけで、そうなると大学残り3年間、けっこう厳しいな~と、そのときは思ったものだった。本当に出番がなくなってしまうのなら、トランスファー(転校)も考えるのだろうかとも思った(アメリカの大学では、よりいいチャンスを求めてのトランスファーは日常的に行われていることなのだ)。松井選手自身は、「それ(転校)は考えていない」ときっぱり否定していたけれど。
 最初の試合のあとにそんな話をしていたら、その翌日の試合で先発のガードの一人が体調が悪くて欠場したことで、松井に出番が回ってきた。20分の出場で、3ポイント4本を含む18得点の活躍! 試合後のロッカールームでは、コーチも他の選手の前で名指しで「KJを誇りに思う」と褒めたという。

P1180883s  そして、ここからは今季の話。一年前にそんなことがあったあとでも、今シーズンはすべて順調というわけではなかった。序盤はまたプレータイムが少ない試合やDNPの試合が続いた。私がテレビで見た11月のオハイオステイト戦も(コロンビアの試合を全米放映で見ることができるのは、けっこう珍しいことなので楽しみに見たのだが)、残念ながら、ユニフォームは着ていたのにベンチのまま、DNPだった。それでも彼はまだ諦めることなく、コーチが課題としてあげていたディフェンスで頑張る姿勢を見せて、得意のシュートも磨きをかけることでシーズン半ばには認められて再びローテーション入り。
 それだけの紆余曲折を経ての3ポイント・タイトル獲得だったのだ。

 アメリカに出てきている日本人選手を取材していて思うのは、1シーズン通してすべてが順調な選手はほとんどいないということ。試合に出られなかったり、先発だったのが控えに回されたり、スランプに陥ったり、1シーズンの間には波がある。でも波は引いたら、また寄せてくる。たとえ、本人にとっては底辺まで落ち込んだと思うような状況になっても、1シーズンを送る間には必ず再びチャンスは巡ってくるというのも、見ているとつくづく感じる。だからこそ、落ち込んだときやうまくいかないときにどうやってメンタル面の強さを保ち、どれだけ努力を続けることができるかが大事なのだ。

 ところで、これもCrossover USAに書いたことだけれど、松井選手はあと1年でコロンビア大を卒業、卒業後は日本でバスケを続けたいのだと言う。ヨーロッパでのプレーも選択肢に入れているようだが、話した感じでは、今のところは日本でやりたい気持ちのほうが強いような印象。まぁ、中学の頃からずっと親元を離れ、母国を離れてアメリカでプレーしているのだから、そろそろ日本でやるのもいいんじゃないかとも思う。
 とはいえ、まだ一年先ということもあってか、それともNCAAのシーズンが日本のシーズンと重なっているからなのか、どのチーム関係者もまだスカウティングに来たことはないらしい(少なくとも、本人にわかるような形では)。興味あるチーム関係者の方、プレーを見たければチームから試合のDVDをもらうこともできると思いますヨ。それを見れば、NCAAの中ではあまり評価されていないアイビーリーグとはいえ、決して低いレベルではないことがわかるはず。

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2008年3月22日 (土)

元チームメイト

 この更新ではコロンビア大の松井選手のことを書こうと思っていたのだけれど、それは週明けに回して、きょうはポートランド大の伊藤大司選手について書こうと思う。というのも、きのう取材に行ったレイカーズの対戦相手がソニックスで、試合前にケビン・デュラントと伊藤選手についていろいろ話したので。 ちょうどその前日に伊藤選手に電話で取材、今シーズンの話を聞いたのを受けて、伊藤選手の高校時代のチームメイトのデュラントにも話を聞いてみたのだ。

P1110333s_2  まず、デュラントがきのう言っていた言葉から。
「タイシにはとても影響を受けた。僕が彼からどれだけ影響を受け、どれだけ助けられたか、彼も知らないと思う」

 前から書いてきたようにデュラントは、高校最終学年を前に、伊藤がいたモントロスに転校してきた。当時のデュラントは基本的には家から通っていたのだが、学校まで約1時間半と少し遠かったこともあって、よく伊藤選手のホームステイ先に泊まったのだという。そして伊藤といっしょに朝早く起きて授業が始まる前に早朝練習をするようになったのだという。伊藤の練習熱心なところ、努力の姿勢に、デュラントもかなり刺激を受けたようだ。きのうも、何度も何度も、「彼はすごく努力する人」「僕がいっしょにいたことがある中で、タイシは一番努力、ハードワークをする」と言っていた。

P1240861s_5  伊藤選手にとって今シーズンは、私生活でもバスケットボールの面でも、とても厳しいシーズンだった。私生活では、長年闘病していたお父さんが11月に亡くなった。このため、シーズン途中に一時帰国して4試合を欠場(実は、その前のシーズンも病状が悪化という報を受けて一時帰国するなど、この2年は日本とアメリカを行ったり来たりだった)。バスケットボールの面でも、若いチームだけに好不調の波が激しく、なかなか勝ち星に繋がらず、キャプテンの伊藤自身もシュートが入らずに苦戦した。
 実際に私が会場やテレビで見た試合では、たとえシュートが入らなくても十分にチームに貢献していたと思うのだが、本人、シーズンの途中には、シュートが入らないことでかなり自信を失ってしまったらしい。しかも、シュートに対する自信だけでなく、プレー面で全体的に自信を失っていたという。

 結局、チームはカンファレンス成績3勝11敗(計9勝21敗)の成績でWCC8チーム中7位、3月頭に行われたWCCトーナメントでも1回戦で敗退した。この試合も、大差をつけられていたところを追い上げ、オーバータイムまで持ち込んでの接戦となったのだが、最後のシュートを伊藤選手が外してゲームオーバー。 デュラントにその話をしたところ、「それは選手としてすごくきつい終わり方だ。今年の彼は選手としても人間としても、あまりに多くの(つらい)ことを経験しすぎた」と。さらに「でも彼は絶対にこれを乗り越える。大丈夫」とも言っていた。

 デュラントと伊藤の二人の今シーズンに共通しているのは、勝つより負ける試合のほうがずっと多いということ(デュラントのソニックスは現在16勝53敗)。強豪モントロス時代に、ほぼ毎試合勝って当たり前、シーズン最後には当時全米ナンバーワンのランキングだったオークヒルに勝ったときとは大違いだ。
 でも、負けて初めてわかることもある。試合に勝つということがどれくらい嬉しいことなのか。先日も、デュラントがポートランドに遠征に行ったときに、久しぶりで二人でいっしょに時間を過ごしていろいろな話をしたらしいが、そのときに、「試合に勝てると嬉しいんだよね」「そう、本当にそうなんだ」と言い合ったという。

 伊藤選手はすでに次のシーズンに向けての練習を始めている。チームも今年卒業の4年生は1人だけで、主力が1、2年生ばかりという若いチームなので、来シーズンの成長に期待したい。
 デュラントのほうは、シーズン残りあと13試合。負けてばかりで落ち込んでいるかと思ったら、「負けるのはつらいけれど、毎日、最高のレベルの選手たちを相手に戦えるのは楽しい」と前向き。こちらも若いチームだから、来シーズン以降が楽しみだ。

(伊藤選手のシーズンについてのさらに詳しい記事は、4/25発売、月刊バスケットボール6月号のCrossover USAに書く予定です)

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2008年3月20日 (木)

日本人選手のマーチマッドネス

すっかり間があいてしまいました。

NCAA(D1)ではトーナメントが始まり(きょうもLA時間の朝9時過ぎから、三大ネットワークのひとつ、CBSで生中継放映中)、いよいよマーチマッドネスも佳境を迎えていますが、残念ながら、アメリカの大学でプレーしている日本人選手たちのシーズンは一足早くに終わってしまいました。←私が知っている限りでは…なので、「この選手の大学はまだシーズンが続いているよ」という情報があれば、ぜひ教えてください。

P1210227s_2 全米チャンピオンに一番近づいたのは、NAIA(※)のD2に所属するヘイスティングス大の山下春香選手。NCAAのD1の強豪校と同じレベルというわけではないのだけど、それでも、全米ベスト4に入ったのだからすばらしい!(左の写真は去年夏、LAにて取材時に撮影)

全米トーナメント準決勝(3/17)は、後半と最初のオーバータイムのどちらも終盤にリードを取り、勝利まであと数秒というところから同点に追いつかれてしまい、ダブル・オーバータイムの末の悔しい敗戦。私も、決勝まで進んだら取材に行こうと、メディアパスやホテルなどを手配していて、あとは飛行機のチケットを手配するだけだったのだけど、残念ながらすべてキャンセルしました。試合後に本人が電話をくれましたが、「(負けが)まだ受け入れられません」と、かなり落胆した様子。大学最後の試合になってしまっただけに、余計悔しかったことでしょう。

この試合、山下選手は50分中46分に出場で、15点、5アシスト。試合映像は見ていないけれど、play by playで見ていた感じでは、前半は外からのシュートが入らなくて大苦戦。3ポイントを9本連続で外していた。それでも、その後も必要な場面では(と想像)、きっちりシュートを打ち続け、残り4本中3本を決めたのはさすが。チームメイトやコーチの信頼を得ているからこそ、そして、彼女自身がメンタル面でのタフさを備えているからだと思う。これで彼女の大学キャリアは終わり。この後はヨーロッパなどでプレーする道を探すのかな…。Good luck!

※NAIAはNCAAに比べると小規模の大学が多く、レベル的にもトップ同士で比べれば劣るが、NAIAのトップレベルとNCAAの下のほうを比べると十分に高いレベル。スポーツ奨学金もあるし、NCAAに比べると年齢制限などが緩かったりというメリットもある。山下選手も、日本で短大(樟蔭東女短)を卒業後にW1の荏原で2シーズンプレーし、渡米後にセミプロリーグでプレーしたあとNAIAで2シーズンプレーしている。そのあたりのことは、月刊バスケットボール2007年12月号のCrossover USAのコーナーで詳しく書いているので、興味ある人はぜひ読んでみてください。

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