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2010年8月20日 (金)

日本代表の“新しいカルチャー” (1)

 先日の一時帰国中に、スタンコビッチカップ出発直前の男子日本代表の公開練習&記者会見の取材に行ってきた。記者会見の後、トム・ウィスマン・ヘッドコーチの囲み取材があったのだが、その中で何度か"新しいカルチャー (new culture)"という言葉が出てきた。cultureという言葉から受けるイメージは、国や土地の文化を思い浮かべる人が多いのではないだろうか。でも、実はもっと狭い範囲、たとえば学校だったり、チームにもそれぞれの"culture"というものがある。伝統、習慣、やり方、そういったものを全部ひっくるめたような意味だと考えればいいのではないかと思う。

 …と、一見、小難しい言葉の定義から始めてみたけれど、難しいことはこれぐらいにして、早速本題に入る。ウィスマンHコーチが口にした日本代表の「新しいカルチャー」とは、いったい何なのだろうか。
 わかりやすく言うと、代表に選ばれるようなトッププレイヤーたちが、夏のたびにNBAサマーリーグや海外でのトレーニングと代表活動の二者択一を迫られることがないやり方。どっちかを選んだら、どちらかが消えるのではなく、両方を選べるようなやり方。これを代表チームの視点から見ると、成長したいという気持ちを持っているトッププレイヤーたちを代表チームから除外せず、何とか代表チームに組み込んでいく方法を探すやり方。

 ウィスマンHコーチの言葉を引用しよう。
「これは日本にとっては『新しいカルチャー』ですが他国の代表チームにとっては『新しいカルチャー』ではありません。他国ではしばらく前から、国のトッププレイヤーが他のリーグに入る(ことによって代表活動が制限される)という問題を抱えてきました。日本も最近になって、そういった問題に直面するようになりました。これは日本のバスケットボールにとってはいいことです。そういったレベルで才能を認められる選手がいるということですから。
 私たちとしては、そういった選手たちをサポートしていきたいと思っています。彼らを代表チームから除外するのではなく、彼らを入れたチームにしていきたい。これまでは代表活動に全面的に専念することを約束しなくてはいけなかったため、代表に入るためにはそういった(海外での)チャンスをパスしなくてはいけなかったわけです。しかし、その道を進んでいくと、国のトップクラスの選手を(代表チームから)失い続けることになります。ですから、私たちとしては彼らをサポートし、彼らにはそういった経験をして上達したスキルを日本のバスケットボールに持ち帰ってもらいたいと思っています」
「そうすることによって、代表チームのコーチの仕事はより大変になります。しかし、彼らを入れないというのはクレイジーなことだと思います。成功できるような最善のチャンスを作り出すためには、最高の選手たちを入れる必要があるのですから」

 実際に、今月、スタンコビッチカップに出発する前のミニ合宿中に、ウィスマンHコーチは、アメリカでのトレーニングから戻ってきた竹内譲次選手、そしてそれとは別に、故障で離脱していた伊藤俊亮選手と実際に会って話す機会を設け、スタンコビッチカップの代表メンバーには入らなかった彼らだが、将来の代表構想の中に入っているという話をしたのだという。

 そのことに関しても、ウィスマンHコーチの言葉を引用する。
「譲次は会ってみたら、外から見てわかるぐらい、身体がたくましくなっていました。ナショナルチームの新しいカルチャーにおいては、そうやって個々の力をつけ、よりいい選手になるために努力をしたいという選手に対してはサポートをしていきたいと思っています。そして、そういったサポートに対して、彼らのような鍵となる選手たちからは将来に向けてのコミットメント(代表活動に関わるという約束)を求めることになります。そのことを彼らにも説明し、彼らも理解してくれました。将来的には、最高の選手たちによる最高のチームを作り上げていきたいと思います」

 ウィスマンHコーチは、竹内譲次、伊藤俊亮のほかにも、柏木真介、岡田優介、大学生から代表に参加した金丸晃輔、満原優樹の名前もあげ、彼らをはじめとする選手たちも、まだ将来に向けての代表構想から外れたわけではないと強調していた。

「彼らもまだ代表の長期的な構想の中に入っています。今回代表に入った選手たちも、将来的には代表の座をかけての競争があることを理解しています。(代表チームは)そうであるべきだと思いますし、そうである必要があると感じています」(ウィスマンHコーチ)

 きょうはここまでにしておきます。次のブログではこのことに対して、もう少し突っ込んで考えてみたいと思います。

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コメント

ウィスマンHC,日本滞在が長いだけあって言葉も微妙な使い方がうまいですね。こちらから読むとnew culture = revolution そのものですが「改革」と言ってしまうと選手も協会も今までを否定されることにもなりかねないし、うまい言葉だとと感じるばかりです。

いちファンとしてはこういった言葉こそ協会側から出るべきという思いもありますが今までの小浜さんや内海さんのそばで協会を近すぎず遠すぎない位置から見ていたからこそかも言えるのかもしれませんね。

投稿: bkino | 2010年8月20日 (金) 07時21分

>bkinoさん

早速のコメント、ありがとうございます。

海外に出て行く選手に対する方針としてなら、去年夏に倉石さん(当時強化部長兼代行ヘッドコーチ)も同じようなことを言っていたのですが、確かに表現の仕方はウィスマンHCのほうが上手なのでインパクトはありますね。

この発言が記者会見でなく囲み取材の中で出てきたことから、協会の方針というよりは、ウィスマンHC自身の考えなのかなと思っています。このことについては、かなり長く、自主的に語っていましたので、ウィスマンHC自身、何らかの形で発信したかったことなのではないかと思っています。

投稿: 陽子 | 2010年8月21日 (土) 14時51分

この記事を見て、バスケットボール日本代表及び日本のバスケットボール自体が成長するには、今までのスタイル(メンバーがある程度固定されて、競争意識やモチベーションが低い)やったら絶対通用せんから、彼が選手の意識改革を促す意味合いも含んであのスタイルを新たに採用したんやと思うで。これから重要なことは、彼のコネクションを上手く利用することも必要やし、日本のバスケットボール関係者(特に、年代別に関わらず選手や協会関係者が)が、常に他人の言いなりや指示通りに行動することが優秀及び美徳やというのは、真っ赤な嘘やし、醜態やし、成長をスポイルするデメリットな塊だらけやし、時代錯誤やでということを理解せんとアカンし、本来最も人間らしく美しく崇高な行動である、常に自分の頭で考え判断して工夫しての行動やプレイや自己主張や自己表現や日常生活を送ることができるようにならなアカンと思うで。更に、その点や現代のバスケットボールの理解力についてはまだまだ未熟やし、高いレベルに至ってへんから、今までの傲慢及び時代錯誤な行動や発言を完全に改めて、今それらの重要性をしっかりと理解し、少しでも高いレベルで遂行できるよう彼らには努力してもらわなアカンと思うで。

投稿: ホルへ | 2010年8月21日 (土) 19時16分

>ホルヘさん

>競争意識やモチベーションが低い)やったら絶対通用せんから、
>彼が選手の意識改革を促す意味合いも含んであのスタイルを新たに採用したんやと思うで

そうですね。それもあると思います。そのあたりも次のエントリーでもう少し突っ込んで触れたいと思います。

投稿: 陽子 | 2010年8月24日 (火) 22時21分

>yokoさん
こんにちは 先日のラジオ(Zip-FM)放送聴きましたヨ!
(というか毎月聞いてますが...苦笑)

世界選手権いよいよですねぇ
今回の大会は アメリカだけでなく
どこの国もBest of Bestのチームで臨めないだけに
本当に混沌としているように思います。
(先日のUSA vs スペインの1点差ゲームや
ギリシャ vs セルビアの乱闘事件といい...)

良い意味で言えば、どこの国にもメダル獲得のチャンスが
あり、ベンチの采配によっては、競い合う良いゲームがたくさん
見られると思いますが、、、
悪く言えば、競技レベルがあまり高くなく
(NBAやユーロリーグのトップクラスという意味で...)
ジャッジに文句を言ったり、乱闘やその他ゲームと関係の
ないところに注目が集まってしまう危険性も...
個人的には感じています。

いずれにしてもアメリカ代表チームを中心に動いていく
大会だと思うので くれぐれも選手達にはゲームに
集中して臨んでいただきたいと切に願っています。
個人的にはケビン・デュラントのリーダーシップ(スタッツではなく)と
センター・PF陣がリバウンドを取れなくなった時の対応
と それに付随した コーチKの采配に注目しています。

(本当のことを言うと その次の「女子日本代表チーム」が
出場する大会の方が楽しみだったりもするのですが...笑
ホント 最近の日本代表チームは男女ともに ベストチームではないものの
追い風が吹いているように感じます!ガンバレニッポン)

では また 来月以降も紙面でもラジオの前でも
楽しみにしています。

投稿: chamomileの父親 | 2010年8月26日 (木) 19時39分

>chamomileの父親 さん

いつもご視聴いただき&感想を知らせていただき、ありがとうございます。

そして世界バスケ、いよいよ始まりましたね! 今大会は現地には行っていませんが、その分、単純に仕事抜きで試合を楽しみたいと思います。

どのチームにとっても、常にベストというのは無理なこと。ベストでない中でも力を出し切れるような体制というのも大事ですね。

投稿: 陽子 | 2010年8月29日 (日) 14時14分

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