大物新人にドラクエを思い出す!?
ひとつ前のエントリーでは、やられ役のような書き方をしたブレイク・グリフィンだけれど、実際、彼にはこの先、こういう経験をたくさんしてほしいと思っている。…って、なんだか偉そうな言い方だけど、やられれば、やられるだけ成長できる選手だと期待しているからそう思うのだ。
少し唐突なことを書くと、個人的にグリフィンを見ているとドラゴンクエストにはまっていた日々を思い出す。なぜって? その理由は少し後で説明する。
開幕戦から今まで、15試合以上グリフィンのプレーを生で見てきて、何よりも驚くのは彼の成長のスピードだ。開幕戦は、アリーウープばかり狙っていて、ポストでポジションを取ることもほとんどなかったのが、試合を追うにつれてポストアップもするし、ボールを持ってからもスピンムーブからのレイアップ(ダンクと並んで、今の彼の得意技のひとつ)やターンラウンド・ジャンパーなど色々なムーブを見せるようになった。ダブルチーム、トリプルチームで囲まれた時のパスアウトもよくなってきた。辛抱強さも見せるようになったし、試合の中でどうペース配分をすることもできるようになった。少し前には弱点だと思っていたところが、数試合後には修正されているのだ。その成長ぶりを見るのは、胸がスカっとするあの豪快ダンクとともに、今シーズンのグリフィンを見る楽しみのひとつだ。
まだ新人。もちろんまだ失敗もするし、ミスもたくさんある。グラント・ヒルから比べたら、まだ穴だらけでもある。でも、若い選手の場合はそういった部分も含めて魅力なんだなと、最近、つくづく思うのだ。弱点があるということは、成長する余地があるということ。そして、それは成長の過程を見る楽しみがこの先にあるということ。選手として完成形に近づいているベテラン選手の巧さとはまた別の魅力がある。
グリフィンでなぜドラゴンクエストを思い出すのかというと、強敵と対戦すればするほど成長を感じるところ。
ナンバー769号のNBAコラムでも書いたけれど、グリフィンは試合の前のスカウティングだけでなく、対戦が終わった後のビデオでもマッチアップした選手をさらに研究するほど研究熱心な選手だ。その結果、相手がいい選手であればあるほど、グリフィンはその相手の長所を自分の中に取り込んで成長していく。ドラゴンクエストで、相手が強ければ強いほど、その敵を倒した後に自分のキャラが強く成長していくように。
つくづく、これだけの選手をルーキーシーズンから間近で見れるのは、ライターとしてこれほどの幸せはないと思う。
長年続けていると、どんなことでも日常になってしまう。贅沢だと怒られることを覚悟で書くと、かつてはとても特別なことだったNBAを取材することも、いつの間にか当たり前に思うようになっていた自分がいた。
それが、グリフィンを見ていると、レギュラーシーズンでも毎試合ワクワクした頃の気持ちを思い出すのだ。対戦相手がどんなチームであっても、試合を見に行くのが楽しみに思えてくる。そして、そう思える選手にまた出会えたということが嬉しい。
これで、試合後のコメントが面白かったらさらにいいのだけれど、まぁ、そこまで求めるのは贅沢…というよりも、そうなると彼らしくなくなってしまうのかもしれない。それに朴訥とした話し方でも、そのコメントを長いスパンで聞いていると一本筋が通っていて、なるほどと思わされる。そういう発見もまた楽しい。
間もなく終わる2010年。振り返れば、今年もまたすばらしいものを見せてもらった幸せを感じる。
中でもすばらしかったのが、今まで見てきた中でもトップクラスの好シリーズだったレイカーズ対セルティックスのNBAファイナル。特にあの第7戦は、試合としては両チームともミスが多くてボロボロなのに、どちらも限界まで戦っている熱い気持ちが伝わってきて、見ているだけで感動した。あのシリーズを取材できたことは、マイケル・ジョーダンを間近で取材できたことと並んで、私のこれまでのライター人生で最高に幸せなことだったと思う。
そして、今、またグリフィンのような、先が楽しみな逸材と巡り合えた幸せをかみ締めつつ、新しい年を迎えようと思う。
読者の皆さま、取材に応じてくれた選手やコーチの皆さま、そして編集者の方々をはじめ、記事が世の中に出るために力をあわせてくださった方々、今年一年、どうもありがとうございました。
そして、来たる2011年もどうぞ、よろしくお願いします。
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