カテゴリー「国際試合」の記事

2009年10月21日 (水)

マカビ・テルアビブ@LAクリッパーズ

 きのう(10/20)のクリッパーズのプレシーズン試合対戦相手は、イスラエルのマカビ・エレクトラ・テルアビブ。この数年は、こうやってユーロリーグのチームが10月にアメリカに来てNBAチームとプレシーズン試合を戦うことも珍しくなくなってきた(今回、マカビは10/16にアメリカに来て、10/18に@ニックス、10/20に@クリッパーズという日程だった)。

P1000380s_3  それにしても、クリッパーズの本拠地、ステイプルズ・センターでの開催なのに、圧倒的にマカビのファンのほうが多いという不思議な試合だった。イスラエルの孤児院のためのチャリティゲームで、何でもクリッパーズのシーズンチケット・ホルダーのチケット・パッケージの中には入っていなかったらしい。マカビ・カラーの黄色を身に着けている人が圧倒的に多く、クリッパーズの名物ファン、クリッパー・ダレルがいつもの声援を始めても誰もあとに続かず、それどころかブーイングする人までいたほど。ニューヨークではLA以上にマカビ・ファンが多かったらしいというから、あらためてユダヤ人人口の多さと結束力の強さに驚かされた。

 マカビは13人中アメリカ人選手が5人、イスラエル人選手が6人、ポーランド人選手とアフリカのガボン共和国の選手が各1人ずつというチーム構成(しかも、ガボンのステファン・ラズメとイスラエル国籍のうち3人はアメリカの大学出身と、アメリカに縁が深い選手ばかり)。NBA相手の試合は国籍制限があるわけではないので、先発はアメリカ人4人+ポーランド人(元サンズ→ホーネッツ→ロケッツのマチェイ・ランペ)という、イスラエル人選手が一人も入らないラインナップだった。

P1280664s_2  アメリカ人選手5人のうちの一人が、今シーズンからマカビ・テルアビブに入ったドロン・パーキンズ。3年前、NBAのサマーリーグで田臥選手とマッチアップしたときにブログでも取り上げたことがあるけれど、4年前にトヨタ・アルバルクでプレーしてJBLのMVPを取ったガード。JBLのあと、ドイツ、ベルギー、イスラエルとチームを渡り歩き、ベルギーと昨季のイスラエル(マカビ・ハイファ・ヒートという別チームに所属)でもMVPを取っている。これまではユーロリーグに入っていないチームばかりだったので、ユーロリーグで戦うのは今シーズンが初めて。行く先々で結果を出し、順調にステップアップしているようだ。

 クリッパーズ戦でのパーキンズは、先発ではなかったものの、1Q半ばに出てきてすぐにジャンプシュートを決めたり、クリス・ケイマンのパスをスティールして速攻で得点を決めるなど、積極的なプレーでチームのリズムを作り出していた。後半にはテルフェアをドリブルで抜いてレイアップを決めたり、バロン・デイビスからチャージングを取ったり。終わってみたら16点・10アシスト・12リバウンド(トリプルダブル!)の活躍。試合は108-96でクリッパーズが勝ったけれど、十分に存在感を示していた。

 試合後にパーキンズにいろいろ話を聞いたので、明日にでもアップします。

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2009年8月10日 (月)

天津レポート(2)

 天津でJ-Sportsレポーターとしてアジア選手権を取材中の吉田暁央アナウンサーから、天津ABCレポート第二弾が届きました。吉田さん、お忙しいところ、ありがとうございます! ちなみに、吉田さんいわく、「慣れると天津は住みやすいところです。物価は安いし、食べ物はおいしい」だそうです。

* * *

吉田アナ・天津レポート第二段

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 アジアバスケもいよいよ2次リーグに突入。日本はもうひとつ波に乗れないまま2次リーグ最初の相手、イランにも負けてしましました。相手の高さに圧倒されたのかもしれませんが…。あと2試合は絶対負けられない試合になりました。

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 前回は観客のいない天津体育館の写真を送りましたが、中国戦ともなると会場内は大声援に包まれます。改めて中国でのバケットボール人気の凄さに驚かされます。

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 中国美人も顔に国旗のシールを貼って応援です。誰の写真を撮っているんでしょうか? 場内には美人が多くついつい試合を追うのを忘れてしまいそうです(笑)。

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 さて、今回のABCは2つの会場で開催されています。
第2会場は南開大学体育館。この大学は周恩来さんの出身校だそうです。

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 2週目からはこの会場で13~16位の決定トーナメントが行われています。
天津体育館では19時から中国戦が行われますがあえて南開大学に行ってみました。カードはスリランカ対ウズベキスタン戦。観客はまばらでスタッフや警備の人たちの姿かめだちます。しかしコートでは選手たちが熱戦を繰り広げていました。

* * *

 吉田さん、ありがとうございました。日本の次の2試合の相手はクウェートと台湾。2試合とも勝ってやっと決勝ラウンド進出の可能性が出てくる、という厳しい状況なので、なんとしてでも2連勝で希望を繋いでほしいものです。

 ちなみに、私もFIBA TVでイラン戦を見ました。たまに映像が止まるのと、解説は一切なしなのが物足りないですが、まぁ、年間30ドルですから、あまり文句も言えません。
 この試合で見た日本代表は、特に前半の動きは1次ラウンドよりもよくなってはいた(パスを出す先を探しているときでもゴールを狙っている感じで、それそれ、と思ってました)と思うのですが、20点差~30点差に開かれたあたりでやや集中力が切れてしまったという印象。あと気になったのは、個々のプレーがあまりに素直すぎるところ。もうちょっと嫌らしいプレーをしてもいいと思うんだけれどな~。

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2009年8月 6日 (木)

天津レポート

 日本代表を追いかけて天津まで来てしまいました…と言いたいところですが、残念ながら私はLAで原稿書きの毎日です。ただし、天津にはこのサイトの特派員(?)を派遣しました。…ではなくて、J-Sportsのレポーターとして、現地でアジア選手権を取材中の吉田暁央アナウンサーが、写真とレポートを送ってくれました。吉田さんの了解を得た上で、私の独断で編集して掲載します。茶色文字の( )部分は私の感想です。

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A

8月4日(火)
 日本代表は北京から陸路天津に到着。夜には市内の体育館で1時間ほど軽く練習を行う。しかし、いきなり、カタールが練習時間をオーバーして待たされた挙句、帰りのバス迎えにこなくてなかなか帰れない羽目に!

 パス(選手証、スタッフ証)の発行でもトラブル続き。追加召集された正中選手のパスが発行されていなかったり(これはすぐに解決)、トレーナーなど数名のスタッフ用パスはなかなか準備されず、チーム関係者は対応に追われる2日間であった。選手たちをしっかりサポートしたいのは山々であるが、その体制を作るまでにかなりの時間と精力を使わなくてはならなかった。
(移動、異国で疲れているところに、これはきつそうです。特にパスがないと何もできないですから、スタッフの方も苦労したことでしょう)

8月5日(水)
 朝8時から練習。時間は早いものの、日本チームの状態は上々のようだ。
ただし桜井選手は腰が悪く(ジョーンズカップで打った腰ですね)、練習は別メニュー。軽いストレッチだけだったとのこと。

8月6日(木)
A_2  写真は韓国戦の試合前の練習風景(試合前なのに観客がほとんどいない! 大会前日の試合の風景かと思いました)。反対サイドには韓国の応援が大挙して押しかけて、まるで韓国のホームコート状態でした。
(FIBA TVの映像でも、韓国チームのファンの応援風景が映ってました。数は少ないものの、日本からも日の丸の旗を持って応援にかけつけたファンがいたそうで、選手たちも嬉しかったことでしょう)

 追加召集の正中選手はパスは出たものの、公式に発表されたロースターにも載っていなくて、どうやら選手登録の手続きができていなかったらしい(そのため、吉田アナは私が紹介した台湾記者から「日本は11人で戦うのか」と聞かれたとか)。韓国戦では試合に出られず、スタッフとしてベンチ入りしています。今後出られるように交渉中だそうです。折茂選手は体調不良(お腹の具合が悪いとか)で韓国戦はベンチ入りせずでした。

*****

 韓国戦の結果は…皆さんご存知だと思うのでパス。以上、吉田アナの天津レポートでした。果たして、この天津レポートの第二弾があるかどうかは未定。吉田さんが元気だったら送ってくれるかも? とはいえ、お仕事で忙しいでしょうから、期待せずに待つことにしましょう。
 また、これは私の記事ではないので、今回はBasketball-zineには掲載せず、ココログだけの掲載にします。

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2008年8月24日 (日)

続・準備期間

 きのう(北京24日・LA23日深夜)の北京オリンピック男子決勝戦はお互いに気持ちがこもった、とてもいい試合だった。出だしの笛が厳しかったことで全体にオフェンシブな流れになったけれど、個人的にはミスによって決まる試合よりもプレーが決まって決着がつく試合のほうが好きなので大満足。
 スペインはさすが黄金世代のチーム。層も厚く、さらに下の世代も出てきているので、しばらく世界の頂点をアメリカと争うチームになりそうだ。アメリカ代表も、花の2003年ドラフト組(レブロン、カメロ、ウェイド、ボッシュ)を中心に、ベテランが要所を締め、若手も活躍するいいチームだった。これまでの即席チームだったら崩れてしまっていたところで、踏ん張れるだけのチームになっていた。

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 さて、前回の記事で、アメリカ代表の練習日数自体は以前とそれほど変わっていなくて、あまり多くないという話を書いたけれど、だからといってアメリカが準備不足だったと言いたいわけではない。むしろ逆。選手の身体、疲労を考えて練習日程は最小限にとどめていたけれど(※)、準備自体にはものすごく多くの時間とエネルギーをかけていた。

 たとえば、米代表責任者のジェリー・コランジェロは、2005年4月にこの仕事を引き受けてすぐ、代表チーム作りの方向性を決めるために国際試合を経験した元コーチ、元選手らの経験者を集めてミーティングをし、国際試合ではどんな点が違うのか、向いている選手、コーチは誰なのかなど、彼らの意見を聞き、知恵を拝借した。選手を選ぶ際にも、コランジェロが選手たち(今回の12人だけでなく、候補に入った選手全員)一人一人と会って、チームの方針(3年のコミットメントなど)をきちんと伝え、それに同意するかどうかの確認を取った。ライバル国のスカウティングにも時間と人材を割いていた。

 さらに、ここまでやるのかと驚かされたのは、選手たちに国を代表することのプライドを植えつけるための数々の手段。

 たとえば、2年前のキャンプにはイラクの戦場で視力を失った兵士が来ていた。彼の話は、国のために戦うということがどういうことなのか、選手たちにかなり強い印象を残したようで、それ以来、選手の間から「兵士たちとは比べものにならないけれど、僕らは僕らのやり方で国を代表して戦う」といった表現が聞かれた。
 正直言って、個人的にはスポーツの場に戦争、兵士の話を持ち込むのは抵抗があるのだけれど、ウェストポイント(陸軍士官学校)出身のコーチKらしいやり方だと思うし、アメリカ的だとも思う。←アメリカにいると、いろいろな場面で、一般市民が兵士に対して深い感謝、敬意を抱いているのを感じるのだ。NBAの試合でもハーフタイムなどに招待されている兵士が紹介されると、観客みんなが自然とスタンディングオベーション。消防士に対してもそうなのだが、命を捧げて自分たちを守ってくれている彼らに心から感謝しているのだ。

 今年のキャンプでは、1972年、疑惑の判定でソ連に敗れたときの米代表の一員、ダグ・コリンズを呼んで、当時の経験談を聞いていた。この試合がどれくらい不思議な試合だったかは、ミュンヘン五輪、男子バスケ、決勝戦といったキーワードで検索すれば出てくると思うのでここでは省略するが、当時のアメリカは試合直後に抗議したものの3対2では認められず、自分たちは金メダルをもらうべきだという信念のもと、銀メダルを受け取らなかったのだ。
 当時の話、今でも忘れられない悔しさは、話を聞いた現代表選手たちの心に深く染み込んだようで、きのうの決勝で勝ったあと、試合の解説者としてコートサイドにいたダグ・コリンズのところに米代表の選手全員が近づいて握手をしていた。72年チームの分も"redeem"(名誉挽回)すると言う気持ちだったようだ。

 他にも、6月のミニキャンプのときに練習コートのコートサイドに大型モニターを持ち込んでマービン・ゲイが米国歌を歌い上げた場面(1983年のオールスター@LA)を流したり(チームのスポンサーでもあるナイキが、このときの練習風景の映像を使ってCMを作り上げていた)、チームのメディアお披露目も兼ねてニューヨークで船に乗り、自由の女神を見て、かつて移民だった自分たちの祖先が最初にアメリカの地を踏んだときを思い浮かべたり、コート上での練習とは違うけれど、これもチームが戦う準備だった。

 こういう過程を経てきたからなのかもしれないけれど、今回の代表の選手たちは国を代表する誇りということに関しては、他国の選手にもまったく負けていなかった。たとえばインディアナポリスでの世界選手権やアテネ五輪の頃は、アメリカ選手たちにとってはNBAの続きの試合のような感じで、あまり国の代表に対する熱い想いは感じられなかった。

 選手が揃っているアメリカでも(いや、アメリカだからこそ、かもしれないが)、そんなことにも時間や手間をかけるのかと驚いたけれど、決勝戦を見たあとで考えると、そういったことも今回の代表チーム作りの中でも重要なステップだったと思える。

※結果的には、決勝トーナメントに入ってからの対戦相手、オーストラリア(ボガット)、アルゼンチン(ジノビリ、ノシオニ)、スペイン(カルデロン)はすべて故障者が出て戦力ダウンしたのに対して、アメリカは大会中に故障者が一人も出ずフル戦力で戦えたわけで、作戦成功と言っていいと思う。

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2008年8月21日 (木)

準備期間

 北京オリンピックも終盤。女子は先ほど準決勝が終わり、男子も明日が準決勝。 "Redeem Team" こと男子アメリカ代表、ここまでは、予想通り、圧倒的な強さを見せて勝ち抜いている。

 ところで、今回のアメリカが強い理由のひとつとして、「4年前よりもずっと練習を積んできているから」と言われているけれど、それならいったいどれくらい練習したんだろうって思っている人もいるのでは? 読み進む前に推測してみてください。参考までに、4年前のアテネ五輪のときの準備期間は20日だった。

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  実は、アメリカ代表が今年に入ってから北京オリンピックまで準備に費やしたのは僅かに24日。そう、アテネ前とほとんど変わらないのだ。そして、これは正確には「練習期間」ではなく「チームとしての活動期間」の日数。つまり、6月のNYでの取材日や、中国への移動日、練習がオフになった日、そしてオリンピック前のエキジビションゲーム(5試合)の日も含まれているので、実際の練習日はこの半分強。他国の準備期間がどれくらいだったのか調べていないけれど、これが世界でも少ないほうであることは間違いない。

 たとえば、去年のアジア選手権前の日本男子が大会前に予定していた合宿(1次~12次)の日数を数えたら69日だった(あくまで予定からの計算なので、実際に何日練習したかは未確認)

 それでは、何で「今回は練習を積んでいる」といわれるのか。それは、3年連続して同じコーチ、同じ主力選手でチームを組んでいて、去年や2年前の練習や大会での活動期間も北京オリンピックに向けての準備期間という考えだから。今年だけだと24日間だけど、2年前の活動期間(キャンプ+世界選手権=42日)、去年の活動期間(キャンプ+アメリカ大陸予選=24日)を加えれば全部で90日間準備してきたことになるのだ。
 練習期間の短さを継続性で補っているわけで、当然ながらアルゼンチンやスペインのように大会前の練習期間も長く、さらに3年以上主力を変えずに戦っている国の準備期間とは比べものにならない。

 ちなみに、オリンピックのためにWNBAシーズンを中断している女子の場合は、大会直前の準備期間はさらに少なくて約10日間だった。WNBAシーズン前の3月と4月にも代表キャンプ+試合をしているけれど、ダイアナ・タラシらヨーロッパのリーグでプレーしていた選手たちは参加していないので、どちらかというと選手選考のための期間と考えたほうがいいだろう。

 とはいえ今後、少なくとも近い将来は、アメリカ代表が大会前に取る練習期間が極端に増えることはないと思う。NBA82試合+プレイオフという長いシーズンを戦った選手だけで構成されている米代表にとって、これ以上練習期間を増やすことは、むしろ大会に入ってから選手が疲れたり疲労から怪我が出たりといった原因になってしまう。実際に2年前の世界選手権のときは、米代表の上層部では練習不足よりも選手の疲労が問題視されていた。大会前に中国や韓国に寄ったときに、長い時間をかけてバスで米軍基地に行ったりという過密スケジュールで、大会前に疲労がたまってしまったらしい。
 NBA選手が数人というチームならシーズンが長いNBA選手だけあとから合流すればいいけれど(実際に途中から代表チームに参加している米国外のNBA選手も多い)、全員がNBA選手のアメリカではそういうわけにもいかない。選手に3年間の参加を求めるならなおさら。

 そういう状況だけに、限られた時間の中で何を優先的に練習するのかを見極め、実行するのもコーチの大事な役割であり、手腕の見せ所だ。コーチKはオフェンスでは選手のクリエイティビティ、能力に任せて、あまりガチガチのフォーメーションを取っていない。その分の時間をディフェンスの連携プレーや、対ゾーンの練習にあてていた。たとえば、7月後半のラスベガスでのキャンプ4日間のうち1日は、練習相手のセレクトチームに徹底的にピック&ロールのオフェンスをやるように指示し、そのディフェンスの練習。また、別の1日は同じくセレクトチーム相手に徹底して対ゾーンの練習をしていた。期間より効率重視というわけだ。

 今はまだ強さの陰に隠れていてあまり見えてこないが、アメリカに脆さが残っていることは間違いない。個々の能力は高く、そして3年継続することでFIBAルールの理解やチームメイトとの連携などの面で以前よりは前進しているとは言うものの、やはりまだチーム・オフェンスの緻密さには欠けるし、1対1に頼ってしまう場面も見られる。 それでも、無理して練習期間を長くしてプログラムが崩壊するよりは、3年継続のプログラムを持続させることをアメリカは選んだ。そのやり方が正しかったかどうかは、次の2試合ではっきりする。

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2008年8月18日 (月)

オリンピック&世界選手権の出場枠

(文末に訂正、追記を加筆しました(8/20))

 ひとつ前の投稿で触れましたが、現時点での世界選手権とオリンピックの出場枠の詳細を表にしてみました。

■世界選手権

Wcm_2  Wcw_2
 
 * 男女とも、直前のオリンピック優勝チームは自動的に出場権を獲得。
  その分、その国が所属する地区の枠が1つ減る。

■オリンピック

Om_2   Ow_2 

 ちなみに、2004年までは、世界選手権で上位6チームに入った国のゾーン(地区)は、次のオリンピックで枠がその数だけ増えるという規定でした(開催国+各ゾーン×1+世界選手権上位6チームのゾーンの国=12ヶ国)。今は、その各ゾーン上乗せ分が世界最終予選枠に当てられています(男子の場合はヨーロッパとアメリカにあらかじめ+1)。
 オリンピック直前の時点で力がある国に出場権を与えることになったわけで、客観的に考えればフェアだとは言うものの、アジア(日本)にとっては厳しい規定変更でした。まぁ、モノは考えよう。世界最終予選で戦うという新たな目標ができたと考えればいいとも思いますが。

 2年後の世界選手権は男女ともにヨーロッパが開催国(男子・トルコ、女子・チェコ)なのでアジアは開催国枠は関係なく、日本は男女とも、来年のアジア選手権で上位3位に入らないと世界選手権には出場できません(厳密に言うと、北京オリンピックでアジアの国が優勝すれば、その国を除いて上位3ヶ国に入ればいいわけですが、可能性はかなり低いので)←【訂正】自分でまとめておきながら、混乱していました。オリンピックでの優勝国は別枠で世界選手権の出場権を獲得するのではなく、その分、地区の枠から減らされるので、アジアの国が優勝した場合はその国+2チームでした。

【8/20 追記】
 とはいえ、アジアの国々が強くなり、世界で上位に入ることは、今後のアジアの枠にまった影響がないわけではありません。上位に入る国が多ければ、今後、FIBAアジアが枠の増加を求めたときにも説得力があり、通りやすくなりますから。

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オリンピック雑感

 お久しぶりです! 1ヶ月ぶりの更新となってしまいました。
そうこうしているうちに、北京オリンピックもすでに半ば。バスケは男女ともに予選ラウンドが終わりました。といっても、私は北京には行っていませんが…。
(オリンピック取材は取材証が取りにくいうえ、チケットでの取材だと制限も多く、進んで行きたいという気持ちにならないんです)

 バスケの試合は毎日テレビで見てます。アメリカではNBCがオリンピックの放映権を持っていて、関連チャンネルをめいっぱい使って放映しています。メインのNBCで放映する試合は限られているけれど、NBCで放映しないアメリカの試合はUSAチャンネルで生放送し、さらにこの期間限定の"Basketball Channel"というチャンネルを設けて(うちのケーブル会社ではMOJOというHDチャンネルを振替)、男女とも全試合を放映しています。一部録画だけど、生放送で見たければNBCのサイトでライブ配信もしているし、バスケットボールの放映に関してはかなり満足(他の面では、NBCで放映している番組が、東海岸はリアルタイム放映なのになぜ西海岸では3時間遅れなのかとか、不満がないわけではないのだけれど、バスケの試合を全部放映してくれている分でその不満はほぼ帳消し)。

 予選ラウンドが終わり、アメリカは男女ともに圧倒的な強さで全勝。男子代表が"Redeem Team"(名誉挽回のチーム)と呼ばれ、挑戦者として王者復活を狙っているということが注目されているけれど、実は女子も2年前の世界選手権の準決勝でロシアに敗れて3位に終わっているので、ミニ・リディーム・チーム。決勝トーナメントでアメリカとロシアが順当に勝ち進めば、再び準決勝でアメリカ対ロシアのマッチアップになるけれど、今回のロシアは強いのだか脆いのだか…。そういえばロシアの202cmのセンターは、かつてWNBAマーキュリーで萩原美樹子選手のチームメイトだったマリア・ステパノバ。当時19歳だった彼女も今は29歳です。

 アジアの国も頑張ってますね。イラン男子は予選ラウンドで脱落したものの、中国は男女ともに決勝ラウンド進出。特にヤオ・ミン今回のオリンピックにかける思いがとても強かったので、ドイツに勝って喜んでいる姿は見ていてこちらまで嬉しくなりました。さらに、緒戦でロシアに金星をあげそこねた韓国女子も、最終戦でラトビアに勝って決勝ラウンド進出。毎試合、リバウンドの数では圧倒的に負けながらも、ターンオーバーを最小限にして、3ポイントで効率よく得点することで勝機を得ている韓国に対して、アメリカの解説(現・元WNBA選手)は「コーチがすばらしい」と賞賛してました。アトランタのときの日本女子も似たような戦いぶりで決勝ラウンドに進出し、地元ファンの間で人気だったのを思い出しました。
 【追記】ところで、今回、アジアの国が決勝トーナメントに進んだことで2年後の世界選手権でのアジア枠が増えると思っている方も多いようですが、残念ながらこれはまったく直接的には影響ありません。アジアからは男女ともに3枠。これについては、別記事で詳しくアップします。

 きょうは思い浮かぶままに記しただけの文章になってしまいましたが、次から数回は、7月末の男子アメリカ代表のキャンプなど、更新をサボっていた間の取材ネタも織り交ぜて書いていこうと思います。

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2008年7月 2日 (水)

USAキャンプ

 NBAファイナルも終わって、少しゆっくりできるかと思ったら、なんだか今年の夏は忙しい。特に今月(7月)は、NBAシーズン中でもこんなにないと思うくらいの出張取材続き。その合間にLAでの取材もあったり、いろんな人に会う予定が入っていたり、家の内装工事があったり…。
 ブログも意識してササッと更新しないと、まったく更新しないまま1ヶ月が終わってしまいそうな予感。とはいえ、この時期の取材は他のメディアでの露出が少ないことが多いので、おそらく情報を待ってくださっている方もいるだろうと思い、雑誌記事の予告編くらいのつもりでササッと更新を心がけます。詳しい内容は、月刊バスケットボールやHOOPの記事を見てくださいね。

P1270480s  ファイナル後、最初の取材は6/28の米代表ミニキャンプ@ラスベガス。当初は2~3日予定されていて、その後に12人のロスター発表となるはずだったのだが、結局キャンプ前に12人を発表。そのメンバーだけで1日だけのミニキャンプを行った。12人全員が過去3回の夏のうち最低1回(カメロやレブロンは3回全部)の国際大会を経験しているメンバーということもあって、この日は感覚やリズムを取り戻すのが目的。本格的なキャンプは1ヶ月後に再開する。

P1270506s_2  去年夏は故障でアメリカ大陸予選に参加しなかったドウェイン・ウェイドも元気になって復活。唯一、ドワイト・ハワードだけはプレイオフのときに痛めた疲労骨折がまだ完全回復していない(6~8週間で回復との診断のうち、このときは6週間目だったらしい)ために大事をとって、この日の練習は見学。7月のキャンプには問題なく復帰できるという。

P1270580s_2  もう一人、怪我が気になるのはコービー・ブライアント。シーズン途中で痛めた右小指(靭帯断裂)は「まだ壊れたまま」(本人談)だそうだが、NBAのシーズンもこのままプレーし続けたように、オリンピックもこのまま継続。オリンピック後に手術を受ける。実際には、ふつうにしている分には痛みはないけれど、何かに当てたとき、ぶつかったときに痺れるような痛みがあるのだという。
 プレイオフ中、故障がシューティングに影響したかと聞かれて、「怪我してすぐに(サポートのための)テーピング(左写真)によって(動きが制限されるために)シュートのリリースが変わってしまって、それに対応するようにシュートのリリースを変える必要があった」との答え。これはレギュラーシーズン中からのことなので、特にプレイオフ中には変化はなかったということか。でも、「影響があったか」という質問に対して否定したわけでもなく、もしかしたら相手のディフェンスが激しくなる中で、修正したはずのリリースが元に戻ってしまったということはあったのかも。
 適応力が高く、こういった故障などにもすぐに対応できるコービーだから、ふつうにプレーできて当然のことのように思ってしまっていたけれど、あらためて考えると、これだけの故障を抱えながら、あれだけのプレーを見せたということ自体がスゴイ。聞かれない限りは自ら小指の故障にも触れないあたりにも、意志の強さを感じる。

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2007年9月25日 (火)

EuroBasket 2007 (7) 新聞&ポスター

 青木さんのヨーロッパ選手権@マドリッドのレポート最終回は、決勝戦翌日のスペインのスポーツ新聞紙面と、大会に向けてのナイキの広告ポスターの写真です。

※青木さんと、スペイン語が得意な友人の助けを得てスペイン語の見出しも訳してみました。スペイン語を表記する上で特有のエニェ([n」の上に[~])はかわりに[ny]で表記、アクセントは省略しています。

Newspapers_4

(左)LAGRIMAS DE PLATA 銀の涙
(地元の大会の優勝を狙いながら、銀メダルに終わったスペイン。銀メダルだったことを伝え、それが泣きたいほど悔しい結果だったということも表していて、なかなかいい見出しですよね)
(中)E TODAS FORMAS... MIL GRACIAS
   
Gasol: "Ahora estamos tristes; manyana, orgullosos"
    それでも…本当にありがとう
    ガソル「今は悲しい。でも明日になれば誇りに思える」

(右)PENA 無念

Nike_ads

こちらは、スペイン代表を応援するナイキのポスター。地下鉄の駅に貼ってあったそうです。

SER ESPANYOL YA NO ESUNA EXCUSA, ES UNA RESPONSABILIDAD.
 スペイン人であることは、もはや言い訳ではない。一つの責任だ。


これ、実はもっと長い文章の冒頭だけを抜き出したもののようで、ポスターにもアドレスが掲載されているナイキの広告サイトに全文が掲載されています。

SER ESPANYOL YA NO ES EXCUSA:
ES UNA RESPONSABILIDAD.

POR ESO AHORA TE TOCA A TI.
ES TU MOMENTUM.

DEMUESTRA QUE CONSIGUES
LO QUE TE PROPONES Y QUE TU
CONTRIBUYES A QUE EL DEPORTE ESPANYOL
ESTE EN SU MEJOR MOMENTO.


SI TU ESTAS ENTRE LOS MEJORES
TENDRAS TU RECOMPENSA


HA LLEGADO TU MOMENTUM.

 スペイン人であることは、もはや言い訳ではない。
 一つの責任だ。
 だからこそ、今、君たちの番がまわってきたのだ。
 君たちの時なのだ。

 目指している地に到達できるところを見せてみろ。
 スペインのスポーツが最高の瞬間を迎えるために
 貢献できることを見せてみろ。

 もし君たちが本当に一握りの優秀な者たちなら
 それに見合った結果がついてくるだろう。

 君たちの時が来た。

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2007年9月23日 (日)

EuroBasket 2007 (6) 9/16 大会最終日

 スペインのマドリッドで、ヨーロッパ選手権(ユーロバスケ=北京五輪ヨーロッパ大陸予選)を取材していた青木さんから、最終日、9/16のレポートが届きました。Mediazoneのハイライト映像とあわせて読むと、さらに臨場感が増すのではないかと思います。

 優勝したロシアは、世界選手権の出場枠を取れなかった2005年からわずか2年で立て直しての快挙。青木さんからのメールには、「ロシアのタフネスには脱帽」とありました。競争が激しいヨーロッパでは、あっという間に勢力図が変わってきますね。

 今回優勝したロシアと3位のリトアニアは北京五輪出場権獲得(スペインは去年の世界選手権優勝ですでに出場権を獲得済み)。4位のギリシャ、5位のドイツ、6位のクロアチア、7位のリトアニアの4チームは世界予選出場権を獲得。8位に終わったフランスは、北京五輪出場の可能性が絶たれました。

 ちなみに、準々決勝から写真の撮影規制が厳しくなったとのことで、文字レポートのみです。

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★青木崇レポート ヨーロッパ選手権 9月16日★

■ロシア 60-59 スペイン(決勝戦)
 失うものがまったくない挑戦者のロシアが、土壇場で世界王者スペインを下し、頂点に立った。アリーナを埋めた1万5000人の強烈なサポートを背に受けたスペインから、ロシアは試合開始早々から猛攻を受ける。この大会でシュートが好調なホセ・カルデロンに、立て続けに3Pシュートを決められるなど、2Q序盤で13対25とリードされていた。
 しかし、その後のロシアは、マッチアップゾーンでパウ・ガソルのインサイドゲームを封じることに成功。オフェンスでは、ハイポストのパスから何度もレイアップを決めるなどリズムをつかみ、ハーフタイムまでに3点差まで追い詰める。
 後半は一進一退の攻防が続き、3Q終了時もスペインの3点リードは変わらない。ところが、ロシアはアメリカ出身のJ・R・ホールデンのレイアップなど、3Q終盤からの10連続得点で、51対50とこの試合初めてリードを奪う。スペインは8分2秒、カルデロンがこの試合5本目の3Pシュートを決めて逆転すると、その後ロシアを引き離すチャンスが何度も訪れた。
 ところが、残り5分を切ってからガソルはプレッシャーを感じ、フリースローを5本もミスしてしまう。残り1分48秒で5点を追うロシアは、アンドレイ・キリレンコがフリースローで3点差。キリレンコは59秒にカルロス・ヒメネスのパスをスティールすると、43秒にニキタ・モグルノフのジャンパーで58対59の1点差まで詰める。
 スペインはタイムアウト後、ガソルのポストプレイで得点を狙うが、28秒にまさかのターンオーバーを犯す。ヘルプディフェンスからスティールを決めたホールデンは、カルデロンをかわしてジャンプシュート。ボールは真上にリムを弾いたあと、そのままネットを通過し、残り2秒に60対59と逆転する。
 タイムアウト後、スペインは再びガソルに託すも、そのシュートはボール半分が入りかけた後にリムを弾き万事休す。ガソルはその直後、フロアに倒れ込み、しばらく頭を抱えしかなかった。スペインは6度目の決勝だったが、ユーロバスケット初制覇はまたもお預けとなった。なお、この試合17点を記録したキリレンコが、大会のMVPに輝いた。

(ロシア)
キリレンコ:17点、4リバウンド、5アシスト
「スペインは世界最高のチームのひとつだけど、今夜はちょっとだけ我々のほうがよかった。すばらしいチームであることにすごくハッピーだし、僕がいなくてもチームメイトはいいプレイができる。全員が一体となって助け合っていた。これは僕のキャリアで最高の栄誉。僕がプレイしてきた中で最高のチームだ」
クルヤッパ:7点、12リバウンド、4アシスト

(スペイン)
カルデロン:15点
ガソル:14点、14リバウンド
「我々にとって、非常に悲しい日ということを理解しなければならない。出来が良くなかったのは認めるし、敗北の責任は僕にある」
ホアン・カルロス・ナバーロ:0点(17分)

□大会ベスト5□
F アンドレイ・キリレンコ(ロシア)
F ダーク・ノビツキー(ドイツ)
C パウ・ガソル(スペイン)
G ホセ・カルデロン(スペイン)
G ラムナス・シスカウスカス(リトアニア)

■リトアニア 78-69 ギリシャ(3位決定戦)
 北京への切符がかかったこの試合は、4人が2ケタ得点とバランスのいいオフェンスを展開したリトアニアが制した。2Q終盤まで互角の展開も、サルナス・ヤシケビシウスとリナス・クレイザの3Pシュートによって、2分32秒で39対30とリード。後半になっても主導権を維持し、4Q中盤にラムナス・シスカウスカスの2連続3Pシュートで、点差を2ケタとして勝利を決定的にした。
 ギリシャは23点のニコス・ジジス以外、シュートが不調。また、センターのラゾロス・パパドポロスが精彩を欠き、インサイドで得点できない状況に陥ったことも、ギリシャの敗因だった。

(リトアニア)
クシストフ・ラドリノビッチ:19点
シスカウスカス:13点、4リバウンド、5アシスト
「メダルとオリンピックの出場権を獲得したことでは、すごく満足している。ロシア戦と違い、いい形で試合をスタートできたのが勝因だと思う」
クレイザ:13点
ヤシケビシウス:11点
「厳しい戦いが続いたけど、オリンピックに出られるということでは、ひとまずホッとしている。メダルを獲得できたことも、我々にとって重要なことだよ」

(ギリシャ)
ジジス:23点
セオドロス・パパルーカス:8点、2アシスト
「オリンピック出場とメダルを逃したわけだから、すごくガッカリしている。先(世界予選)のことは何も考えられない。とにかく体を休ませたい」

■ドイツ 80-71 クロアチア(5、6位決定戦)
 両チームとも世界最終予選の出場が決まっているため、国のプライド以外はまったく意味を持たない試合。3試合連続でシュートが不調だったダーク・ノビツキーが、31点という活躍でドイツが勝利。クロアチアは2Q序盤で2ケタ得点差をつけるも、後半にノビツキーを止めることができずに逆転負け。

(ドイツ)
ノビツキー:31点、12リバウンド
(クロアチア)
マルコ・バニッチ:16点

■スロベニア 88-74 フランス(7、8位決定戦)
 ベテランの司令塔、ヤカ・ラコビッチの24点という活躍によって、スロベニアが来年7月の世界最終予選の出場権を手にした。スロベニアは2Q中盤からフランスにリードを許す展開を強いられるも、4Q開始早々の9連続得点で60対57と逆転。また、4Qのスロベニアはシュートが絶好調で、3Pシュートを8本成功させ、一気にフランスを引き離した。準々決勝から2戦連続で精神的にダメージを受ける敗北を喫しながらも、世界最終予選の出場権をなんとか手にしたことで、試合後のラコビッチは感情を抑えきれずに思わず涙。国の威信をかけ、全身全霊で戦っているということを、正に実感できるシーンだった。
 フランスはパーカーが31点を記録するも、チームメイトのサポートが不十分で孤軍奮闘に終わる。キャプテンのボリス・ディアウはファウルトラブルに泣かされ、無得点という散々な試合となった。

(スロベニア)
ラコビッチ:26点、7アシスト
ラショー・ネステロビッチ:19点、8リバウンド
(フランス)
パーカー:31点、4アシスト
ロニー・トゥリアフ:13点、8リバウンド

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