中国の進む道
NBAのトレーニング・キャンプ開始までカウントダウンとなり、さすがにそろそろ世界選手権モードを脱出しなくては。というわけで、慌てて最後の回をアップします。
----
予選ラウンド最終日の劇的な勝利で決勝ラウンド進出を決めた中国。しかし、決勝ラウンドでは大会準優勝のギリシャのトラップディフェンスに手も足も出ずに、ボロボロにやられてしまった。すっかり中国の大黒柱の風格が出てきたヤオ・ミンいわく、「今回の結果(決勝ラウンド進出)は、一番最低限の目標を達成しただけ。今後はもう少し結果を出していかないといけない」とのこと。
2年後のオリンピックが北京で行われるだけに、ファンやメディア、そして国からも大きな期待をかけられているようだ。その期待の表れのようだったのが、中国から集まったメディアの数。中には取材に来ているのか、応援に来ているのかと思うようなメディアもいたのだけれど(*)、とにかくそのエネルギーたるや、すごい。札幌会場の記者会見では、もっと質問したい中国メディアと、試合後の汗をかいたユニフォーム姿の選手を早く着替えさせてあげたいというFIBAスタッフの間で火花が飛びかっていたこともあった。
そして最終戦後。通常通りの英語+日本語のみの記者会見のあとに、中国のヘッドコーチが中国人メディア向けに追加で記者会見を行った。今、中国のヘッドコーチはリトアニアのヨナス・カズラウスカ氏(聞いた話では、中国は彼に対して、日本がパブリセビッチ氏に払っているよりもかなり高い契約金を払っているらしい)なので、記者会見自体は中国語の通訳付で英語で行われた。それならということで、大勢の中国人メディアの中、私も残ってやり取りを聞かせてもらった。公の場でやっていることだから何の問題もないのに、なんだか「潜入」している気分で隅っこでコソコソしたりして…(苦笑)。
記者会見ではギリシャ戦の敗因、特にギリシャのプレスに対応できなかったことに加えて、今後、北京に向けての強化の話にも及んだ。そこでカズラウスカ氏は「これは私の個人的な提案だ」と断った上で、次のようなことを言っていた。
「このまま選手がCBA(中国のトップリーグ)でプレーしているだけではだめだ。選手を外に送り、もっとふだんから厳しい競争に立ち向かわなくてはいかない。そうやって選手を外に送ることはCBAのレベルとしてはマイナスになるかもしれない。しかし、2年後の北京五輪までの短期間で考えるのなら、そういったやり方も必要だ。
ヤオがいる限り、中国には大きな可能性がある。何もないわけではなく、若くいい才能がある。たとえば、CBAでイ(ジレン)をディフェンスできる選手がいるだろうか。彼は中国国内で、いったいどれだけディフェンスのプレッシャーを感じてプレーしているのだろうか。
イタリア、スペイン、ロシアなど、短期間で強化するにはそういったヨーロッパの国に出ることもいいだろう。たとえば、きょうギリシャが見せたようなボールに対するプレッシャーは、ギリシャでは毎試合経験することができる」
中国のバスケットボール界の動きを見ていてスゴイと思うのは、外国の力を利用してでも成長しようとする貪欲さだ。ヤオ・ミンがNBAから猛烈ラブコールを受けたときも、ヤオにNBAでプレーする許可を与えるかわりに、NBAからコーチのクリニックへの人材派遣をはじめ、強化につながる多くの約束を取り付けていた。ヤオが怪我をしたときや、ワン・ジジがNBAでの高額契約獲得を得ようとして代表チームに戻らなかったときなど、彼らをNBAに出したことに対して懐疑的な声も大きくなったと聞くが、それでもやはり、そうやって貪欲にやってきたことで、確実に中国は前進している。前進しようと努力している。それは、今大会での中国を見て感じたことだった。
さて、北京までのカウントダウンが2年を切った今、このカズラウスカスHCの提案を受け止め、中国バスケットボールはどんな動きを見せるのだろうか。
* 聞いた話では、接戦となった予選ラウンドのプエルトリコ戦中、プエルトリコのフリースローのときにエンドラインのカメラ席から、写真も撮らずにフリースローの邪魔をしようと手を振っていた中国人カメラマンがいたらしい。それを見て憤ったプエルトリコのカメラマンとつかみ合いの喧嘩になりそうだったとか。取材者としてはとても褒められた行為ではないけれど、いやぁ、この熱さはスゴイ。
| 固定リンク
| コメント (2)
| トラックバック (0)
最近のコメント