カテゴリー「non-basketball story」の記事

2007年12月31日 (月)

仕事納め

P1230907s  大晦日、今年の仕事納めはバスケットボールとはまったく関係なく、23歳の若手ショコラティエの取材でした。チョコレートは昔から大好きなので、仕事の話をいただいて、一も二もなくお引き受けしました。

 今後もバスケットボールが仕事の中心という方向性は変えるつもりはないのですが、夏の「24」ロケ地や今回のショコラティエ取材のように、たまにスポーツ界とはまた別のところで活躍している方に話をうかがうのは、気P1230895s_2 分転換になるだけでなく、いい刺激になりますね。今回取材したジョナサン @ compartesも、チョコレート自体の味やデザインはもちろん、お店のパンフレットまで自分でデザインしてしまう才能豊かな青年。話も上手で、あっという間の2時間でした。
 お店で取材しながら、チョコレートもいろいろ試食させてもらいました。「アメリカのチョコレートは甘すぎ!」という既成観念を変えてくれるチョコレートばかり。バレンタインに向けて、1月末から日本の高島屋にも出店するそうなので、お楽しみに。
 記事は、1月26日発売のTitle3月号に掲載になります。

 ここ、ロサンゼルスでもあと6時間で2007年が終わります。いろいろな場面で、健康が一番の財産だと感じた一年でした。こうして元気に仕事をし、すばらしい才能に感嘆し、美味しいものを食べ、家族や友人と楽しい時間を過ごせることに感謝しつつ、2008年を迎えようと思います。
 2008年もどうぞよろしくお願いします。

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2005年8月 8日 (月)

ピーター・ジェニングス

 このブログもホームページも、基本的にバスケットボールの話だけを書く場だと考えているのですが、きょうはバスケットボール以外で書き留めておきたいことがあるので、non-basketballというカテゴリーを作ってみました。

 書き留めておきたいこととは、昨夜亡くなったABCニュースのキャスター、ピーター・ジェニングス氏のこと。アメリカに住んでいない方にとってはあまり馴染みがないかもしれませんが、ABCニュースの顔でもあったベテランキャスターです。肺がんで4月から看板番組のWorld News Tonight with Peter Jenningsを降板(番組としては、一時休みという形をとっていたようですね)、治療にあたっていたそうですが、昨夜、ニューヨークで家族に見守られながら息を引き取ったそうです。

 アメリカには、彼のほかにもテッド・カップル、ダン・ラザー、トム・ブローカー、そして女性でもバーバラ・ウォルターズというすばらしいテレビ・ジャーナリストたちがいますが、その中でもジェニングスは特別でした。少なくとも、私にとっては。

 といっても私はジェニングスをはじめとする米ジャーナリストのことに詳しいわけでもなく、正直言って、NBAのシーズン中は、夕方から夜にかけてNBAの試合かESPNにチャンネルをあわせることがほとんどなので、スポーツ以外のニュースを見ない日のほうが多いんです。だから、実を言うと、恥ずかしながら、ジェニングスが肺がんを理由に番組を降板していたことも、今回の死亡のニュースで初めて知りました。

 そんな私が、ジェニングスをほかのキャスターとは別の目で見るようになったのが、9/11事件後の報道でした。さすがに事件直後は、どのネットワークもエース・キャスターたちがテレビ画面に出てきていました。少しでも多くの情報を知りたいという気持ちから、あちこちのチャンネルをサーフィンしていたのですが、こういうときはどうしても愛国主義的な機運が高まるもので、中でもふだんから若者向けをうたっている某局などは、当初のショックが収まると「アメリカ最強、こんなことをしたやつらをやっつけろ」といった好戦的な空気を前面に出してきて、見ていられない気分になったものでした。もちろん、上にあげたベテランのキャスターたちが仕切っている番組はそんなひどいことはなく、安心して見てはいられたのですが、でも、やはりアメリカからの視点ばかりであることが気になっていました。アメリカ人が、アメリカ人に向けて放送しているのだから当然なことなのですけれど。

 でも、そんな中でジェニングスだけは、少し違ったのです。もちろん、犠牲になった人たちに対する哀悼の意は根っこにもちながら、それでも、どうしてこういうことが起こってしまったのか、ほかの番組にはない多極的な視点で報道していました。中でもすばらしかったのが、いろいろな人種のアメリカ在住の子供たちを集めて、9/11について話し合った番組。子供たちだけでもこれだけ多岐に渡る視点が出てくるのかと思わせてくれる、すばらしい番組でした。当たり前のことと思うかもしれませんが、それだけ当時のアメリカのメディアで出てくる視点は偏っているものが多く、余計に新鮮だったのです。

 そういった、多岐にわたる子供たちの声をうまく引き出していたが、司会をしていたピーター・ジェニングス。床に座って子供たちと同じ視線の高さになり、あるいは輪になって座る子供たちの間を歩き回りながら、子供たちに、どういう気持ちでいるのか、なぜそう思うのかといったことを問いかけていました。それも、あらかじめ決められた筋書きの方向に子供たちの意見をまとめようとするのではなく、子供たちの言うことに真剣に耳を傾け、ともに学ぼうという姿勢が表に出てきていて、すばらしい番組でした。あのときは、アメリカ中、子供たちだけでなく、大人も混乱していた時期で、それなのに物知り顔に語る大人も多かったので、ジェニングスのそういった姿勢はとても新鮮に映ったのです。

 その番組を見た後、インターネットで調べて、ジェニングスがカナダ人だということを知り、それで彼はアメリカ人キャスターたちとは違う視点を持っているのかと納得したものです。ABAのサイトの掲示板では、ジェニングスがカナダ人だからアメリカのニュースを伝えるのにはふさわしくないと批判する声もありましたが。でも、そういった一部の批判は別にして、ジェニングスのような他国(たとえ、それが同じ言葉を使う、ほかよりも近い隣の国であっても)の人物がニュース番組の顔となっているということに、今度はアメリカの懐の深さも感じたものです(ちなみに、ジェニングスはその2年後、2003年にアメリカの市民権を獲得したそうです)。

 私の仕事は、ジェニングスがやってきたこととはまったく分野も違いますし、本当に比較にならないほどちっぽけなことにすぎませんが、どんな仕事をするにしても、ああいった広い視点で考えられる人間でいたいと思います。

 きょうは夕方から、ずっと、ABCやCNNでジェニングス追悼の番組を見ていました。肺がんで"World News Tonight with Peter Jennings"を降板するときの、最後のジェニングスの挨拶も今さらながら見ましたが、病気の影響でかすれ始めた声で、それでも表情は崩れることなく、ジャーナリストの表情でした。

 もう、彼が仕切る番組を見られないとわかって、今さらながら、もっと見ておくべきだったと後悔しています。

 どうか、安らかに眠られますように。

ABCのサイトには、ジェニングスの特集ページがあります。
http://abcnews.go.com/WNT/Jennings/

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