カテゴリー「prep basketball (高校バスケ)」の記事

2009年10月 9日 (金)

続シーズンイン

 9/14の「シーズンイン」記事の続き。少し間があいてしまったので、元記事に追加せずにこっちに新しくアップします。

* * *

P1080903s  すでに1ヶ月も前のことになってしまったけれど、9月、バスケットボール殿堂式典の取材の後に、少しだけ足を伸ばして、スラムダンク奨学生の早川ジミー&谷口大智の2人が留学しているサウスケントまで行ってきた。今月24日発売の月刊バスケットボール12月号にもレポート記事を書いたので、ここでは記事に書ききれなかった話をいくつか紹介。

■早川&谷口の2人と日本語で話していたら、チームメイトの一人が早川選手に「ジミー、君はいったいどこの出身? ブラックじゃないのか?」と聞いてきた。お父さんがアメリカ人の早川選手、確かにブラックの血が流れているのだからそう言われても不思議ないのだけれど、これは見かけだけの話ではないのだ。何しろ彼、いつの間にか流暢な、発音もネイティブかと思うような英語を話すようになっていたのだ。これにはびっくり。何しろ去年4月、トライアウトでサウスケントに行ったときには英語はほとんど喋れなくて、お父さん(日本語ペラペラ)ともいつも日本語で話していたのだとか。留学が決まり、高校バスケを引退した後に勉強したり、映画を見たり、英語を話す友人と積極的に交流したらしい。「昔からお父さんが話す英語はわかった」とも言っていたので、脳の後ろのほうに眠っていた英語が、勉強したことで呼び起こされたのかも。

■取材2日目は日曜だったので練習は休み。学校から車で30分ぐらいのところにあるスーパーとショッピングモールに行った。何しろ、サウスケントは車がないと買い物すらいけないような場所にあるので、必要なものはだいたいこのモールとスーパーで買出し。たまの気分転換でもあるようで、前日にはコーチから「羽を伸ばしたいのはわかるけれど、チームの一員である自覚を持って行動するように」なんていう警告もされていた。もちろん、彼らはまだアメリカの運転免許も車も持っていないから、いつもは学校が定期的に出してくれる大型バスに乗って行くのだとか。モールでは、シューズやスポーツウェアをだいぶチェックしていた。特に身長2m近い谷口選手は、日本ではなかなかサイズが合うものを買えないので、こうやってふつうにサイズが合うものが売っているのが嬉しい、とのこと。そう言いつつ、結局、この日はモールでは何も買わず。

■モールに行く道中に聞いてびっくりした話。早川選手、3年のインターハイ前の九州大会で膝を故障、なんと前十字帯が切れていたのだとか。ふつうなら手術して、復帰するまで1年近くリハビリをしなくてはいけないぐらいの怪我なのに、すぐに普通に歩けるようになったこともあり、トレイナーや医者に診てもらって相談した結果、手術もせずにリハビリ。結局、1ヶ月後のインターハイの初戦直前にチーム練習に復帰し、インターハイは普通に戦ったのだという。早川選手いわく、「稀に手術しなくても、前十字帯がなくても大丈夫な人がいるらしいで、僕もそうみたいです」だとか。実際、今もそのまま手術はしていないけれど、問題なく人並み以上に動けて跳んでいて、まったく影響は感じられない。

P1090028s_2 ■ピックアップゲームでは2人が入ったチームは全勝。勝ち残りだったので、ずっとプレーしていた。2人ともハッスルプレーやリバウンド、シュートなどで勝利に貢献していて、コートサイドで見ていたコーチも2人のプレーには嬉しそう。
  後からそんな話をしていたら、早川選手、「でも、あれは日本だったら全部ファウルにとられてましたよね」とのこと。日本でプレーしていたときには、すぐに ファウルを吹かれてしまうので、思い切りプレーできずにいたのだという。そういう意味では、身体を張ったプレーを思い切りできるアメリカは彼には向いてい るのかも。

■おみやげに月刊バスケットボール10月号を持っていったら、谷口選手が大喜び。というのも、そのインターハイ特集号には妹さん(大阪薫英の谷口菜生)が載っていたのだ。

■その谷口選手、小学生の頃から191cmあったため、昔はだいぶあちこちのメディアに取り上げられて、テレビ取材などもされていた。そのときの話になったら、「短パン履いてランドセルしょって、黄色い帽子をかぶって『行ってきます』って出て行くところがテレビで流れていて、今、あれを見るとちょっと恥ずかしいですね」と笑っていた。当時からまわりとは一回り以上サイズが違ったわけで(自分でも「あれは反則っすよね」とも)、その頃からお父さんとアメリカに行くことを話していたのだという。さすがに小学生の頃はその勇気は出なかったけれど、その後も「背が高いから勝てる」と言われるのが嫌で、同じような身長の選手と戦うことができる場としてアメリカでやってみたいという気持ちはずっと持っていたのが、今回の留学に踏み切った一つの理由らしい。

■谷口選手は、バスケ以外のことではどちらかというとノンビリ屋? 勉強は「苦手」だそうで、「バスケほど熱く語れない」とも言っていた。でも、アメリカでバスケを続けるためにはそうも言っていられない。そんな彼を早川選手が「勉強しないとヤバイよ、ダイチ」とハッパかけていて、この2人、なかなかいいコンビ。励ましを受けて谷口選手も、「(勉強も頑張るというのを)口だけにしないように、ここで言って、それを書いてもらえれば」と言っていた。なので、励ましの意味もこめてここに書いてみた(笑)。

* *

 最後に、下の写真はもしかしたら本邦初公開かな? 去年4月のトライアウトのときの写真で、当時、留学したばかりだった並里選手もいっしょに写ってます。この時点では、まだ谷口、早川のどちらか一人だけになる予定だったのだけれど、2人ともいいプレーを見せてコーチに評価されたこともあり、2人揃って合格ということになったのでした。

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2009年9月14日 (月)

シーズンイン

 スプリングフィールドでの殿堂の取材を終えた後、車を少し走らせ州を越え、この2日間は、スラムダンク奨学金2期生、谷口大智&早川ジミーの2人を取材してきた。
 チームも今週から正式に練習開始。土曜は、シーズン頭の身体測定とピックアップゲームがあった。詳しくは、時間ができてからゆっくり書き足す予定。今はとりあえず、元気な表情の仲のいい写真を1枚だけアップ。

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2009年3月 7日 (土)

日本人選手のマーチマッドネス

 確か、去年はこういうタイトルで月刊バスケに記事を書いたっけ。今年も、マーチマッドネス(大学バスケのトーナメント時期)がやってきた。日本人選手は、なかなかNCAAトーナメントに出るまではいかないのだけど、それでも3月のシーズン終盤の順位争いや、カンファレンス・トーナメントでマーチマッドネスの気分を味わっている。

 という私は、きのう、きょうはNYにいる。今夜はコロンビア大の松井啓十郎(KJ)選手のシニアデー(ホーム最終戦)。高校時代からアメリカで試合を見てきた彼の大学キャリアがいよいよ終わりと思うと、感慨深い。
 コロンビア所属するアイビーリーグは、カンファレンス・トーナメントをせずに、レギュラーシーズンの優勝チームがNCAAトーナメント出場権を得るのだけど、コロンビアは先週末、先々週末にロードで3連敗したことで首位の望みが絶たれてしまった。でも、きのうのプリンストン戦に勝ち(KJは3ポイント5/8を含む17点で、チームのリーディングスコアラーだった)、もしきょうのペン戦にも勝てば、コロンビアとしては16年ぶりの勝ち越しシーズンとなる。去年、おととしも7勝7敗の5割で終わっているので、今年はぜひ一歩前に進みたいところ。

 ラスベガスではWCC(ウェストコースト・カンファレンス)のトーナメントが開催中。伊藤大司選手所属のポートランド大は第3シードなので、きょうから登場する。きょうの試合に勝てば、私も明日から見に行く予定。最近、プレータイムが減ってしまっている伊藤選手だけど、コーチからリーダーシップを買われているだけに、大舞台で存在感を見せてくれることを期待。アメリカでは、日曜の準決勝はESPN2で、月曜の決勝はESPNで放映予定。
※きょうの試合も、WCCsports.comのサイトでインターネット放映予定とのこと。ポートランド対ペパーダイン戦は男子第二試合。米西海岸時間で午後6時から始まるサンタクララ対サンディエゴ戦が終わって30分後、おそらく午後9時前後に試合開始の予定。

 ユタでは中山明日実選手所属するユタバレー大が、カンファレンスに所属しないインディペンデントのチームが集まってのトーナメントに参加中。おととい、きのうと勝ち、きょうがいよいよ決勝。ただし、この大会は優勝してもNCAAトーナメント出場権は得られない。ユタバレーは、ジュニアカレッジからNCAAディビジョン1のチームになって6シーズン目の移行期にあり、来年からようやNCAAトーナメントの出場対象となるのだ。ちなみに、中山選手は現在平均アシスト6.7本。これは、全米ランキングでもトップ10に入る数字なのだが、これも移行期にある大学ということでなのか、NCAA公式サイトではランキングに入れてくれていない。
Yahooサイトではランキングに入っていた。今現在、全米5位タイ。

 そして、大学ではないけれど、ボストン郊外では並里成選手のサウスケントが、ニューイングランド地区のプレップスクール・トーナメントを戦っている。木曜、きのうと連勝して、明日、日曜が決勝。そして、その後に行われるナショナル・プレップ・チャンピオンシップ(全米から8チームが招待)にもすでに出場が決まっている(月曜、火曜に開催)。現在、ポイントガードの一人、リサンドロが故障欠場中なので、並里選手も2番手のポイントガードとして活躍が期待される。NEPSACのトーナメントはサウスケントのサイトで、ナショナル・プレップ・チャンピオンシップの試合はこちらで、インターネット中継される予定(ただしナショナルのほうは有料)。
※3/9追記
上のサウスケントのサイトでナショナルでの試合もライブで見られるようです(無料)。1回戦は日本時間3/10 朝9時から始まります。また、同じくサウスケントのサイトで、NEPSACのトーナメント3試合がアーカイブの形で見られるようになっています。並里選手のプレーを見るなら準決勝(vs Winchendon)と決勝(vs Bridgestone Academy)の前半がお勧め。背番号22です。

 とまぁ、この時期は、毎年のことながら、身体がひとつでは足りない~と嬉しい悲鳴。結局、今年は先週末、ユタバレーでシーズン最終戦を見て、きょうコロンビアで松井選手のシニアデーを見て、ポートランドがきょうの試合に勝ったら明日からラスベガスでWCCトーナメントを見て、合間でサウスケントの試合をインターネットで見ることにした。さて、いよいよラストスパート。それぞれ、力を出し切った形でシーズンを終えられますように。

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2009年1月21日 (水)

ミシェル・オバマの兄&ジョーダン息子

 きのうのオバマ大統領就任式は、NBA選手の間でも注目で、就任式をテレビで見られるように早めに移動したり、オフにしたチームもいくつかあったようだ。

 さて、11月の記事で、ミシェル・オバマ大統領夫人の兄が、オレゴンステイト大の男子バスケットボール・ヘッドコーチだという記事を書いたのだけれど、そういえば、あのときはパソコンが修理中で写真をアップしていなかったことを、きのう、就任式の中継を見ながら思い出した。
 というわけで、大統領就任式を記念して(?)、ロビンソンコーチの写真を掲載しましょう。2007年2月、当時ブラウン大のヘッドコーチをしていたときの写真(ブラウン大@コロンビア大)です。
 左の写真で松井啓十郎選手(水色ユニフォーム)の左側、ブラウン大のベンチ一番端にいるのがロビンソンコーチ。右の写真は、別のカットから、ロビンソン・コーチだけ抜き出してみました。ロビンソン・コーチを狙った写真ではないので少しぼけているけれど、ミシェル・オバマ大統領夫人と似た目元がわかりますか?

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 大統領&バスケ関連のトリビア話ついでに、ミシェル・オバマはシカゴのウィットニーヤング(Whitney Young)高校出身。きのうの就任式パレードでも、オバマ大統領が卒業したハワイの高校に続いて、ウィットニーヤング高校のマーチングバンドが踊りながら行進していて、ミシェル夫人もそれを見ながらノリノリで身体を揺らしていた。
 そのウィットニーヤング高校、バスケットボールにも力を入れていて、毎年のようにシカゴでも上位に入ってくる強豪校(卒業生には、現ニックスのクィンティン・リチャードソンなどがいる)。昨シーズンからこの高校でプレーしているのが、マイケル・ジョーダンの次男、マーカス・ジョーダン。つまり、マイケル・ジョーダンの息子がミシェル・オバマの後輩というわけだ。
 マーカスは郊外の私立高校から昨シーズンの前に、自らの意思でこの高校に転校。同じ高校でスターだった兄、ジェフリーの影から抜け出したかったからと言われているけれど、たぶん、郊外よりも競争が激しい市内の公立リーグで高いレベルの試合をしたかったというのもあるんじゃないかと思う。現イリノイ大で控えとしてプレーしている兄(MJの長男)、ジェフリー・ジョーダンよりもサイズが一回り大きく、有望と言われているけれど、進学先はまだ未定。

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2009年1月 5日 (月)

サウスケント・レポート(2008年12月) その3

 スラムダンク奨学一期生として去年4月からサウスケントに留学している並里成選手のレポート第3弾は、チームのこと、彼自身のプレーのことなど、バスケ関連の話。それから、オマケとしてスラムダンクの海外での人気がうかがえるエピソードを。

■ バスケ

P1040425s_2  並里選手にチームメイトの印象を聞くと、「みんないい人で、なじみやすくて、やりやすい。バスケット的にも派手な選手はいないんですけれど、地道にがんばる選手がいる。自分が思った感じよりまじめ」とのこと。どうやらアメリカだから、フリースタイルで派手なプレーをする選手がいるに違いないと思っていたら、そうではなかったらしい。逆に並里選手のほうが、まわりから「And 1のようなプレーをする!」と言われているようだ。

 チームのポイントガードは並里を入れて3人。コーチによると、「3人ともとてもいい選手で、それぞれに持ち味が少しずつ違う」とのこと。
 開幕戦からスターターとして出ているのは、身長が185cmと最も高く、バスケットボール感覚が優れているアルゼンチン人のリサンドロ(英語はペラペラで、すでにマイアミ大にP1040395s入ることを口頭で約束している)(写真で並里とマッチアップしているのがリサンドロ)。もうひとりは、3人の中では最もシュート力があるアンカレッジ出身のアンソニー。そしてボールハンドリング力に優れ、攻守にスピードを生かしたプレーができる並里。確かに国籍もプレースタイルも三人三色だ。

 並里は、3人の中では一番小さいけれど、ボールハンドリング力とパス能力に長けていて、攻守にスピードを生かしたプレーを得意とするところが評価されている。ただし、まだ、試合の流れの中で瞬時に英語でコミュニケーションする力がないのと、華やかで会場が沸くようなプレーをする一方でターンオーバーを犯すことも多く、そのあたりがリサンドロとのプレータイムの違いとなっているようだ。
 そのあたりのことを含め、並里選手自身が、チーム内での自分の立場や問題点について思った以上に理解していたのには感心。コーチも「彼は賢い選手」と認めてくれているので、あとはシーズンが終わるまでの残り2ヶ月の間に、どれだけ対応し、自分を証明し、プレータイムを勝ち取っていけるいけるかに期待したい。

【追記】ビジネスジャンプの記事が奨学金サイトに掲載になりました。
http://slamdunk-sc.shueisha.co.jp/data/namisato_vol2.pdf

■ オマケ(スラムダンク人気&オデン)

P1040536s  アルゼンチン人PGのリサンドロは、アルゼンチンにいた頃から漫画「スラムダンク」のスペイン語版を読んでいて、大ファンなのだとか。井上雄彦さんを前にして、「会えて光栄です!」と握手を求めていた。井上さんいわく、スラムダンクは、かなり早いうちにスペイン語の翻訳本が出たのだそうだ。機会があったら、NBAにいるスペイン人やアルゼンチン人選手にも、スラムダンクを知っているか聞いてみようかな。
 サウスケントでは、リサンドロだけでなく、韓国や台湾などアジアの国々からの留学生たちも井上さんのまわりに集まって、サインや質問攻め。日本だけでなく、本当に世界中で人気の漫画なんだな~と実感。

P1000074s  サウスケントに行く前に寄ったNYでは、紀伊国屋にも行ってみた。ここには井上さんが壁に描いたバガボンドの絵がある。これだけ大きな絵を描くのは大変だと思うのだけど、実際に絵を描くところも公開したというからスゴイ。井上さんが色紙に絵を描くところは何度も見たことがあるけれど、下書きもなく、サササっと描きあげてしまう。さすがにあの大きさだと下書きくらいはしたのだろうと思って井上さんに聞いたところ、途中で何度も後ろに下がってバランスは確認したけれど、下書きはなしだったとか。

 もうひとつスラムダンク関連の話。NYではブレイザーズ@ニックスの取材に行き、試合後にはビジター・ロッカールームのグレッグ・オデンのところへ。実はオデンは去年夏、「スラムダンク」英語版の宣伝のためにサンディエゴで行われたコミックコンベンションでサイン会などを行っていたのだ。この日、別行動だった井上さんからの「コンベンションの出演ありがとう」の伝言を伝えたところ、オデンは「彼にも、ぜひよろしくと伝えておいて。あれはとても楽しい経験だった。写真撮影の間に読んでいるポーズをとっている間に、本気で読み始めてしまったよ」と言っていた(コンベンション直後のオデンのブログにも同じことが書いてありますね。また、ここには、"Slum Dunk"をつい読みふけってしまっている(?)オデンの写真がありました)。
 井上さんいわく、オデンはマンガ好きということで抜擢したのだそうだ。ただし、本人にマンガ好きなのか聞いたら、「少し読むけれど、たくさん読むというほどではない」とのこと。アメリカではマンガは子供の読むものというイメージがあるので、少し見栄を張った可能性もあるかも?

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2009年1月 4日 (日)

サウスケント・レポート(2008年12月) その2

 きのうアップしたサウスケント取材話の続き、第二弾です。
(「その1」を読み直してみたら、最後が少し説教クサくなってしまってましたね。そんなつもりはなかったのだけれど。まぁ、せっかくの機会なので、最大に生かしてほしいなという気持ちから出たものだということでお許しを)

 「その2」は、これから応募しようかなという人たちにとって、留学先でどんな生活を送るのか、具体的なイメージを思い描いてもらえるように、現在、並里成選手がサウスケントでどんな一日を送っているのかという話と、アスリートにとっては大事な食事の話。

■ 毎日の生活

 寮生活だけに、毎日、かなり規則正しい生活を送っているようだ。並里選手によると、試合のない日の一日はこんな感じ。自由時間には、チームメイトたちといっしょにゲームをしていることもあると、コーチ談。

P1040336s_2   7時        起床 
  7時~7時半   朝食
  7時45分     朝会
  8時~昼     授業
  12時~      昼食
  13時~      授業
  15時半~17時半  練習
  18時前後     夕食
  19時頃~     ウェイトトレーニング(2日に1回)
  20時~22時    自習&補習
  22時~      自由時間→就寝

 相変わらず寮には湯船はなく、遠征にでたとき以外は風呂に入って身体のコンディションを整えることはできないようで(前回のレポート参照)、日本のもので恋しいものを聞くと、今回もまっさきにお風呂とお米のご飯(下参照)をあげていた。

■ 食事

P1250655s (左の写真は4月に行ったときに撮影)

 食事は3食、学内のカフェテリアで食べることができる。というより、とにかくまわりに何もないところなので、車で動き回ることができない生徒たちにとっては、カフェテリアと、週に一度近くのスーパーで買出してくる食料だけが命綱。←少し大げさだけど、本当にそうなのだ。

 並里選手は、アメリカの食事でも美味しく食べてはいるそうだ。ただ、油っこいものが多いからか、日本にいたときほどたくさん食べられないのだとか。
「美味しいんですけれど、お腹いっぱい食べられないです。特に朝(の食事)って大事じゃないですか。朝に油ものとかが出る(のが困る)。ソーセージとかハムや、ハッシュポテトとか」(並里) 

 日本のもので、一番食べたいと思うのは米のご飯だとか。
「日本食、米が食べたいです。米に何か(のりや味噌汁など)がついていればいい」
 サウスケントは韓国系の留学生も多いからか、カフェテリアにも大きなジャーがあって、ご飯が用意されているのでご飯には不自由しないと思っていたのだけれど、どうやらこのご飯はパサパサであまり美味しくないらしい。実家から送ってもらったレトルトのご飯とインスタント味噌汁は貴重品で、夜にお腹がすいたとき(夕食が早いので)には、寮の電子レンジで温めて食べているらしい。

 明日更新予定の「その3」は、いよいよバスケの話です。

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2009年1月 3日 (土)

サウスケント・レポート(2008年12月) その1

 明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

 さて、今さらながらだけど、12月に予告だけしておいておきながら後回しになっていた12月頭の取材の話を。

 行ったのは東海岸、ニューヨークと、そのお隣、コネチカット州サウスケント。スラムダンク奨学金でサウスケント校に留学している並里成選手の取材が目的だった。今回も、前回同様に井上雄彦さんや、奨学金スタッフに同行させてもらった。
 このときの記事は1/7発売のビジネスジャンプ新年3号に掲載になるのだけれど、記事では書ききれなかったこともたくさんあるので、ここではその中からいくつかトピック別に書いてみようと思う。
(長くなったので3回に分けます)

■ 英語

P1040454s_2  サウスケントを訪れたのは8ヶ月ぶり。並里選手はその間にサマーキャンプに出たり、ホームステイをしたり。9月からは学校の新学期が始まり、10月にはいよいよチームとしての活動も始まっている。すべてが順調と言うわけにいはいかず、英語力が勉強面でもバスケをやるうえでも大きな壁になっているようだ。それでもサウスケントでの生活を楽しんでいるようで、「来てよかった」と言っていたのには一安心。

 まぁ、英語で苦労することは、ある程度は予測できたこと。私も高校時代に一年間海外で過ごしたのでわかるのだけど、高校生以上になると、1年くらい英語環境の中で暮らしただけでは英語ペラペラにはならない。一年もいれば耳は慣れてきて、まわりの人が話す内容はだいぶわかるようになり、少しだけネイティブっぽい発音を真似できるようになるけれど、実際に話すときはまだ頭で考えながらでしどろもどろ。1年を終えて、2年目に入る頃から、ようやく耳で聞いてきた言葉が、頭で考えなくても出てくるようになる…というのが、平均的な留学生の英語力の進化だと思う。

 ま、最初からコミュニケーションも勉強も問題がないようなら、プレップスクールに行く必要はなく、まっすぐ大学に進めばいいわけで、英語を身につけ、学力を上げる期間のサポートとしてこの奨学金があるのだ。とはいえ時間には限りがあるわけで、並里選手も今回、だいぶ奨学金のスタッフや井上雄彦さんからハッパをかけられていた。
 前から何度も書いているけれど、日本人選手がNCAAでプレーするときに一番の壁となるのはプレー以上に英語力&成績。最初から本気で取り組まないと、奨学金の期間もあっという間に過ぎてしまう。大事なのは、奨学金での留学期間が終わったときの選択肢ができるだけ多くなるように努力することだ。
 これは、並里選手だけでなく、今後の奨学生についても同じことが言える。奨学金をもらえても、決してその先が約束されているわけではない。奨学金の期間を最大限に生かすために、実際に留学する前から少しでも英語力をつける努力をしていてほしいと思う。

P1040350s ※ちなみにスラムダンク奨学金では現在、第3期生を募集中(1/30必着)。アメリカで自分の力を試してみたいという志ある高校2年生は、ぜひ応募してほしい。1期生、2期生と日本代表クラスの選手が選ばれたこともあって、日本代表に選ばれるくらいでないとダメだと諦めている人もいるかもしれないけれど、個人的には、そんなことではくじけないくらいの気概ある選手の応募があるといいな~と思う。ちなみに、これは私が思うだけでなく、奨学金スタッフの人たちの間からも同じような意見が出ていました。

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2008年5月 3日 (土)

サウスケントへの旅

P1250553s  NBAプレオイフ・モードに入る前に、4月の取材ネタをもうひとつ。
 漫画家・井上雄彦さんが集英社とともに設立した「スラムダンク奨学金」の奨学生一号、並里成選手の留学生活スタートの様子を取材しに、サウスケントまで行ってきた。4月頭に到着したばかりの並里選手は、生活面では慣れないことも多いようだったが、バスケになると昔からそこにいるかのように溶け込んでいた。実は、並里選手のプレーを生で見るのは初めて。なるほど、確かに日本に残るよりはアメリカに出てきたほうが生き生きとするタイプかもしれない。思ったよりもいろいろと考えてプレーや練習をしていることに感心。
 今はオフシーズンなので、きちんとしたチーム練習ではなく、ピックアップゲームや、自主練習中心。それにしても、いつ行っても使える体育館があるというのは贅沢な環境だ。一番困っているのは、寮にバスタブがないことだとか。
 ちなみに、この学校はホッケーも強いらしく、体育館のほかに専用のアイスホッケー場があって、「アイスホッケーをやるために留学してきた」という日本人留学生もいた。

P1250584s_2   今回、私が仕事として依頼されたのは並里選手の取材だったのだが、ちょうど行っている間に第二回の奨学生候補選手のトライアウトも行われた。…というより、その時期にあわせて同行させてもらったと言ったほうがいいだろうか。学校との打ち合わせ、トライアウトも同席させてもらったので、いろいろ見聞きすることができた。立ち上げ前に相談を受けた奨学金が、こうやって実際に動き始めているところを見ることができて、個人的にもとても感慨深かった。
 並里選手のトライアウトのときもそうだったが、今回のトライアウトも、井上さん&奨学金スタッフの一行の計4名が日本からわざわざサウスケントまでやってきた。3泊4日の滞在中、スタッフ全員が並里選手のことはもちろん、次の候補選手のことも真剣に考え、学校側やコーチとも話し合っていた。まるで、それぞれ自分の子供を送り出している気分ではないかと思うくらい真剣だ。あらためて、スタッフのこの熱さ、情熱がスラムダンク奨学金の一番の魅力なのだと思う。と同時に、このプロジェクトが井上さんやスタッフにとっても元気の素になっているんだな~というのも実感。何しろ、みんな、楽しそうだったもの。
(右の写真はシュート練習中の並里選手と話す井上さん)

 今回のトライアウトに参加した選手が誰だったのか気になる人も多いと思うけれど、正式発表になるまでは伏せておく。近いうちに奨学金サイトで発表になることでしょう。候補選手2人、それぞれに持ち味があって、アメリカ人選手の中でも物怖じすることなくプレーしていたのがよかったな~。このトライアウトに参加するだけでも、彼らにとってはかなり貴重な経験だったはず。コーチからもらった課題を忘れずに、ぜひこれからの一年に、そしてその先に生かしてほしい。

P1250900s_2  トライアウトや並里選手の様子は、井上さんの公式サイトにあるイノウエニュースにも、井上さんの、愛情こもった言葉で綴られているので、まだの方はそちらもぜひ読んでみてください。
 イノウエニュースといえば、第一回の訪問記に書かれていていて、妙に気になっていたベッド&ブレックファストのスターバック・イン。今回、私も泊まることができた。スターバックおじさんに、愛犬のマディソン。そしておじさん手作りの、地元の食材をふんだんに使った朝食。おじさんは、男性陣にしきりとレディファーストを教え込もうとしていた。
 全部で5部屋しかないので、今回、井上さんとスタッフ、そして私で満室。つまり、貸切り状態だった。滞在中、道沿いに立てられた看板の下には、"No Vacancy"の札が下がっていたのを見て、なんとなく写真に収めたくなってパチリ(左の写真で右端のほうにある看板)。人里離れたこの土地で満室は珍しいのではないかと思ったのだけど、よく考えたら、これだけ居心地がいい宿だから、けっこう常連客がいるのかも。
 私たちが滞在した4日間はずっと晴天で、気持ちのいい春日和。花も満開で、とても綺麗。次にここを訪れるのは、バスケシーズンが始まって寒くなってからかな…?

 今回の取材記事は、5/24発売のSportiva 7月号に掲載の予定。並里選手のかっこいいスーツ姿の写真も掲載されるかも(学内では授業中にはスーツ&ネクタイを着なくてはいけないのだ)。もし掲載されなければ、あとでここに追加しておきましょう。

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2007年11月30日 (金)

カメロの母校

P1230208s NBA選手の母校訪問シリーズ第2弾。今回訪れたのはバージニア州にあるオークヒル・アカデミー。
 タイトルにカメロの母校と書いたけれど&今回の取材はカメロのことがメインだったのだけれど、この高校、おそらくアメリカで(ということは世界で)最も多くNBA選手を輩出している高校なのだ。
 ざっと最近の選手をあげると、ジェリー・スタックハウスもここの卒業生だし、ジェフ・マギニス、ロン・マーサー、スティーブン・ジャクソン、サガナ・ジョップ、スティーブ・ブレイク、もっと最近ではジョッシュ・スミスやラジョン・ロンド、マーカス・ウィリアムスもオークヒル同窓生。ケビン・デュラントも、ジュニア(11年生)のとき(モントロス・クリスチャンに行く前の年)に一年だけオークヒルにいたことがある。
 もらってきたメディアガイド(高校でメディアガイドを作っていること自体がすごく珍しい)には、NBAにドラフトされた選手として20人の名前があげられている。その中にデュラントは入っていないから(今年のドラフトだったからなのか、それともオークヒルを卒業したわけではないからなのかは不明)、実際にはもっと多いことになる。

 そんな伝統が一目でわかるのが上の写真の奥の壁にかかっているユニフォーム。このサイズだとよくわからないかもしれないが、全部、オークヒル卒業生の大学でのユニフォームだ(カメロのシラキュースのユニフォームは下の段の一番左。その横6枚目はスタックハウスのノースカロライナのユニフォーム)。レプリカではなく、実際に着たものを各大学から(その選手が大学のキャリアを終えたあとに)もらったのだというからスゴイ。地元のコレクターから、全部まとめて7万5千ドル($1=110円で計算すると約825万円)で買い取りたいとオファーされたこともあるらしいが、今もユニフォームが壁にかかっていることからわかるように、このオファーは断ったのだという。かけられているユニフォームを数えると49枚あるが、当然、ディビジョンIに進んだ選手はもっといて、ジムを訪れた大学の関係者からも「うちにもオークヒルの卒業生がいたのに掛けられていない。送るからぜひ掛けてほしい」と言われるらしいのだが、すでに壁のスペースがなくなってこれ以上かけられない状態なのだとか。写真をクリック拡大したときのサイズをいつもより大きめにしているので、興味がある方はどうぞ(それでも、まだちょっとわかりにくいかな…)。

 オークヒルといえば、全米ランキングの上位常連チーム。数年前から何度か試合を生で見てきたが、印象としては緻密なバスケットボールをするわけではなく、大味でミスも多いのだが、力、能力差で相手をねじ伏せてしまうチーム。それだけ能力が高い選手が多いということでもある(勧誘しなくても、選手のほうから『入りたい』と言ってくるのだという)。今日の試合(相手はバスで7時間かけてオークヒルまでやってきたジョージアの高校)でも、出だしは競っていたのだけれど、2Qの終わり頃から少しずつ点差が開き始めて、最後には118対77と、41点差でオークヒルの勝利。

 ひとつ、今回の取材でこれまでに持っていたイメージを覆されたことがあった。オークヒルの選手は勉強をしないというイメージだ。いろんなところで聞いた噂話などからそう思っていたのだが、実際のオークヒルは全寮制で、少数精鋭の学校。規律も厳しく、実際に生徒の多くは学業面での向上を期待してオークヒルにやってくるらしい。バスケットボール選手も、大半の選手が大学に入れるだけの成績を取っているのだという。勝手な先入観を持っていてゴメンナサイ。

P1230267s  さて、この高校が他の高校に比べてとても特殊なのは、全寮制であることと、ど田舎(バージニアの山の中)にあること。今回、私も、まずはシャーロットまで飛行機で飛び、そこから車で宿泊した街まで約2時間弱。さらにそこから1時間余りかけて高校にたどり着いた(シャーロットからまっすぐ行けば2時間ほどらしいが、何しろ、近くにホテルを見つけられなかったのだ。実際にはもっと近くにあるらしいのだが)。
 そんな場所にあり、しかも大人のつきそいがなければキャンパス外にも出てはいけないなど厳格な規則がたくさんあるから、都会から来た生徒にとっては最初はかなりキツイようだ。カメロも、最初の頃は家に帰りたくて泣いてばかりいたのだとか。
…と、カメロがオークヒルに通っていた頃の話もいろいろ聞いてきたのだが、この続きは月刊バスケットボール2月号(12/25発売)で。

 とても楽しかったNBA選手の母校訪問取材なのだが、ウィンターカップ前のミニ特集だったので、残念なことに今回のオークヒル訪問で終わり。うーん、残念。また、そのうちこの続きの取材をする機会があるといいな~。

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2007年11月 3日 (土)

レブロンの母校

P1220814s_2 今回のクリーブランド取材の一番の目的はここ。クリーブランド近郊、アクロンにあるセント・ビンセント-セント・メアリー高校、レブロン・ジェイムスの母校だ。
 ヘッドコーチに話を聞く前の日に練習を見せてもらった。月曜と火曜にトライアウトを行ったばかりという、出来立てのホヤホヤのチームの、たぶんシーズン2回目の練習。

 ここは私立の高校で、レブロンの高校として生徒も増えたというから、そんなにお金がないとは思うのだけれど、体育館は1つだけ(この高校を卒業した記者によると、もうひとつ新しく体育館を建てる話も出ているらしい)。授業が15時に終わり、女子チームが18時まで練習。18時ぴったり、女子が終わると同時に、男子の練習が始まった。

 私が見たのは最初の2時間だけだったのだが、そのうち1時間をディフェンスのポジショニングのドリルに使っていた(翌日に聞いた話では、そのあとさらに1時間、同じドリルをしたらしい)。
P1220807s_2   現在のヘッドコーチは、レブロンがジュニア(3年)、シニア(4年)のときのヘッドコーチ(1~2年のときはアシスタントコーチ)なのだが、いやぁ、厳しい、厳しい。指示したことが直っていなかったり、動きが悪かったり、動きをサボっていたりすると、緑のシャツを着たバーシティ(一軍)とジュニアバーシティ(二軍)が全員ダッシュ(白シャツはフレッシュマン=一年生チーム)。ドリル1~3回に一度の頻度で「ベースライン!」との声が飛び、ミスが繰り返されると2往復、3往復と増えていく。
 彼の前のコーチ(現在、近くの大学のヘッドコーチ)も同じように厳しいコーチだったらしく、レブロンの時代には、彼もこうやってダッシュさせられていたようだ。

 まだまだいろんな話があるけれど、続きは11/24発売の月刊バスケットボール1月号にて。
  ←現在、ウィンターカップ前の3回集中連載で、アメリカの高校について書いてます。1回目の12月号では、ロサンゼルスの公立高校、フェアファックス高校を取り上げてます。

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